成長戦略としてのマーケティング

マーケティングとは「売れる仕組みを作ること」です。顧客に売りに行く(プッシュ)のではなく、顧客から買いに来る(プル)ことが理想です。しかし現実にはそう簡単に上手く行きません。マーケティング理論を知識として蓄えている人は多いですが、それらを実務に生かすことができる人は少ないからです。この記事では、マーケティング理論の実用を前提に、基本的な考え方を整理しています。コロナ禍で、コスト削減に努めるも、営業・販路開拓で成果が出ず苦しんでいる方にとって、突破口となるかもしれません。

目次

マーケティングの基礎(STP)

「STP」は、アメリカの経営学者であるフィリップ・コトラーが体系化したマーケティング理論です。Sはセグメンテーション、Tはターゲティング、Pはポジショニングを指します。基本的には、S→T→Pという順番で分析を行います。ただ近年では、必ずしも順序にこだわる必要はないという考え方もあります。したがって、自社の状況に応じて柔軟にSTPを実行すると良いでしょう。

S:セグメンテーション

セグメンテーションとは、市場細分化のことです。まずは、同じようなニーズを持つ人々をグループとしてまとめます。その際には、以下のような指標を用います。

・人口(年齢、性別、職業など)
・地理(地域、文化、気候など)
・心理(性格、価値観、ライフスタイルなど)
・行動(新規/既存顧客、購買のきっかけ、使用用途など)

これらの指標を考えて市場ニーズを把握するには、推測ではなく事実に基づいて分析を行います。具体的には、統計調査やアンケート、ユーザーデータなどを用いることで、より正確な結果を得ることができます。

T:ターゲティング

人々のニーズに基づいて、市場をいくつかに分けることができたら、どの市場(セグメント)をターゲティングする(狙う)かを考えます。押さえておくべき点としては、以下のようなものがあります。

・市場の規模や将来性、競合状況や参入障壁
・自社(製品・サービス)の強みを活かせるか
・マーケティング施策の効果測定ができるか

これらを見ればわかるように、ターゲティングは客観的な分析を行うことが難しいです。そのため、評価基準(クライテリア)を設定して、セグメントごとに点数をつけた後に、議論を進めていくと良いでしょう。

P:ポジショニング

ポジショニングでは、ターゲット市場の中で自社の製品・サービスを、どのように位置づけるかを決めます。よく行われるのは、価格や品質、特徴や独自性、使い方などを考えながら、ふたつの軸を定めてマトリックス(ポジショニングマップ)を作る方法です。

<図:ポジショニングマップの例>

ポジショニングは、市場の反応を見て再定義する(リ・ポジショニング)場合もあります。非常に重要なプロセスですので、仮説検証を繰り返しながら最適な戦略を考えましょう。

マーケティング・ミックス(MM)

マーケティング・ミックス(以下、MM)とは、マーケティングにおける実行戦略を策定することです。前章で解説したSTPによって、何を(What)・誰に(Who)・どのように(How)製品やサービスを提供するか、大筋は決定しているはずです。MMでは、これから紹介する4Pと4Cというフレームワークを活用しながら、より具体的に戦略を考えていきます。

4Pは売り手視点(プロダクトアウト)

4Pでは、製品・サービス(Product)・価格(Price)・流通(Place)・プロモーション(Promotion)の4つの戦略を策定します。

1つ目の製品・サービス(Product)では、どのような製品やサービスを提供するかを考えます。2つ目の価格(Price)では、製品やサービスの価格を決めます。3つ目の流通(Place)では、ターゲット顧客に対して、製品やサービスをどのように届けるかを考えます。4つ目のプロモーション(Promotion)では、製品やサービスへの興味・関心を高めて購買に導くための広報・広告戦略を立てます。

ここで押さえておくべきことは、これらの戦略が全て売り手視点(プロダクトアウト)であることです。4Pが生まれた1960年は、大量生産・大量消費の時代であったことが背景にあります。しかし時が経て、物を作れば売れるという時代は次第に過ぎ去り、これから説明する4Cというフレームワークが1993年に提唱されました。

4Cは買い手視点(マーケットイン)

4Cでは、顧客価値(Customer Value)・顧客費用(Customer Cost)・利便性(Convenience)・コミュニケーション(Communication)の4つの戦略を立案します。

<図:4Pと4Cは対となる>

上図のように、4Pと4Cの各戦略は対になっています。異なるのは、4Pが売り手視点の戦略であることに対し、4Cは買い手視点(マーケットイン)の戦略であることです。それでは、4Cのそれぞれの要素について説明します。

1つ目の顧客価値(Customer Value)では、製品やサービスが顧客にとってどのような価値を持つのかを考えます。2つ目の顧客費用(Customer Cost)では、製品やサービスの価格だけではなく、購入に必要な交通費や手数料、購買に至るまでの検討時間などのコストも考慮します。3つ目の利便性(Concenience)では、製品やサービスへのアクセスのしやすさを検討して、最適なチャネルを導き出します。4つ目のコミュニケーション(Communication)では、自社と顧客の間における双方向のコミュニケーション戦略を立案します。

4Pと4Cのどちらが正しいという議論ではなく、売り手視点・買い手視点のどちら側からもMMを考えて、両者のギャップを解消していくという方が、より最適なマーケティング戦略を策定することができます。

デジタルマーケティング

これまで、マーケティングの基本的な戦略である「STP」と「マーケティングミックス(MM)」について解説してきました。本章では、近年注目を集めているデジタルマーケティングについて解説します。

まず、デジタルマーケティングのスコープ(範囲)を明らかにします。よく混同されるのは、Webマーケティングとの違いです。Webマーケティングのスコープは、オンラインでの戦略に閉じています。例えば、SEOやアフィリエイト、Web広告などが代表的です。これに対して、デジタルマーケティングはより広義な概念です。つまり、オンラインだけではなくオフラインでの戦略も含みます。

<図:デジタルマーケティングとWebマーケティングのスコープ>

わかりやすい例として、無人コンビニとして話題の「Amazon Go」について考えます。まずユーザーは、入店するときにスマホのアプリでQRコードをかざします。次に、商品をエコバッグに入れていきます。後はスマホのアプリでQRコードを再度かざして出店するだけです。その背後では、店内にある無数のカメラ・センサー・マイクからの入力データをAI(人工知能)がリアルタイムで処理しています。そして、ユーザーごとに購買データ(トランザクション)が蓄積されていき、正確かつ詳細に仮説を立て、検証するループを回すことができます。

このように、オンラインとオフラインがシームレスに融合するような戦略は、Webマーケティングのスコープにはなく、デジタルマーケティングならではの特徴だと言えます。一見、自社には関係のないように思えるかも知れません。しかしデジタルマーケティングのトレンドは、時代の大波です。詳しくは、別の記事にまとめるつもりですが、興味がある方はぜひご自身でリサーチなさってみてください。

執筆:師田賢人

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この記事を書いた人

【Harmonic Society株式会社 CEO】
外資系コンサル、Webエンジニア、Webライター、フォトグラファーを経て、2023年にHarmonic Society株式会社を設立。企業の経営の悩みを言葉で解決している。一橋大学商学部卒。

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