ポーカー市場は、昨今勢いに乗り始めている市場で、ゲームとしても非常に成熟しており、麻雀やトレーディングカードなどから転向してくる人口も増えてきていると言います。
また、国内では競技としても盛んで、まだまだ成長し続けているフェーズである。そんな期待値の高まるポーカー業界だが、ビジネスとしての実態も気になるところでしょう。
そこで本記事では、東北を中心にマーケットを第一線で盛り上げるポーカー店を営む経営者、比嘉庸貴さんにインタビュー形式で、ポーカーハウスのビジネスモデルの現状と大事なポイントについて伺いその内情に迫りたい。
~比嘉庸貴(ひが やすたか)さん 29歳~
高校は甲子園にも出場した強豪校出身。卒業後オーストラリアの大学に入学し、在学中にインスタグラマーと非店舗型を掛け合わせたアパレル事業を立ち上げヒットさせる。
その後、ニューヨークに拠点を移し飲食業を展開させるも、コロナの兼ね合いで日本に帰国。帰国後、「OneWay株式会社」を設立し、主に広告業とアミューズメントカジノ事業を営んでいる。
アミューズメントカジノは、店舗「9High」を2021年10月に仙台にオープンさせ、現在も店舗拡大中で、仙台・広島・新潟・福島の4店舗を運営している。
ポーカーのプレイヤー歴も約9年で、プレイヤーとして大会でも結果を残す実力者。まさに東北のポーカー業界の顔であり、マーケットを第一線で盛り上げている経営者。
ポーカーハウスのオープンについて
写真:9High福山店(広島)
ポーカーハウス(アミューズメントカジノ)のオープンと聞くと、ゆかりのない筆者からすると、ギャンブルなど悪いイメージなど難しそうに感じるが実際はどうなのだろうか。
ここでは、ポーカーハウスを実際に開業した比嘉さんからの取材を通じて、ポーカーハウスのオープンの経緯や実際オープンして感じたことなどの想いに迫ります。
オープンに至った経緯や背景
Q:まずはオープンに至った経緯や背景を教えてください
「当時は仙台に1店舗しかなく、ポーカーができる所を作りたいという想いで作りました。単に自分がポーカーをしたいというのもありましたが。あとは、その当時のポーカー熱を見てた時に、ちょうど3年前ですが、やったらすごいハマるだろうな、うまくいくだろうなというものが絵としても見えた。マーケットとしても仙台がブルーオーシャンで、これから流行りそうだなというビジョンも見えたのもあってスタートしました」
実際にオープンしてみて
Q:オープンしてみて後悔はありますか?
「後悔はありません。変な言い方に聞こえるかもしれませんが、それは、営業利益もでていて※ビジネスとしても成り立っていますし、自分の趣味としての領域も充実させてくれてるからです」
※後述「ポーカーハウスのビジネスモデル」「経営するうえでのポイント」も参照
Q:逆にやってよかったと思うことも教えてください
「やってよかったなってことでいうと、自分の好きなところ(ポーカー業界)において周囲から主要な人物だと認識されていることで、多様な情報が入ってくることです。あとは、自分が強いとそれだけ宣伝効果にもなり、ポーカーっていうところに対してもより双方的に熱が入ります。大会とかでも、優勝したり準優勝したり、国内や海外で成績残してたりもしていて、ポーカーに対してよりモチベーションも上がるから本当にやってよかったと思います」
※アミューズメントカジノを4店舗運営し、「百花繚乱」という大会も運営している。また、プレイヤーとしても国内、海外で精力的に出場し、優勝などの実績もあり、特に東北のポーカー業界において主要人物である。
Q:東北のポーカー界隈では有名と聞きましたが、それはプレイヤーとして強いからですか?
「多分東北の中での店舗では、自分で言うのもあれですけど古参な方ですし、百花繚乱という東北大会を、自分自身で主催しているのもあり、おそらくプレイヤーとしても、店舗のオーナーとしても、店舗としても、しっかりしてますよねという※イメージはあるのではないかと思います」
※ポーカーはギャンブルという悪いイメージもあるので、こういった公式的で健全なイメージは重要な要素でしょう。
ポーカーハウスのビジネスモデルと内情
ポーカーハウスは、ポーカーの面白いゲーム性と人と人がつながるコミュニティとして、多くの人にとって魅力的な場所であると認知を広げています。
そこで本項では、そんなポーカーハウス(アミューズメントカジノ)のビジネスモデルとその内情を伺いました。そのビジネスモデルと実際の経営者からみえている感覚とは?
ポーカーハウスのビジネスモデル
Q:ポーカーハウス(アミューズメントカジノ)のビジネスモデルを教えてください。
「アミューズメントカジノは基本的にゲームセンターと同じ感覚です。メダルゲームと同じで、まずはチップを借りて、そのチップは何も変わらないというのが基本原則。だからランニングコストみたいなのがそこまで掛からず、人件費と光熱費、家賃とドリンクぐらいでしょう」
※その分、開業資金は必要な側面もあり、専用のテーブルやチップ、椅子、バー設備などの資金が必要です。店舗の規模にもよりますが一般的には1,000万円ほど必要とされています。
開業するために必要なこと
Q:開業するにあたって必要な許可はありますか?
「カジノに関しては風営法5号営業の許可、飲食を提供するのであれば飲食店営業の許可や食品衛生管理など特に難しい要素はないと思います」
経営するうえでのポイント
Q:経営を成立させるうえでのポイントなどあれば教えてください
「ポーカーの存在をやっぱりまだまだ知られてないので、まずはポーカープレイヤーの人口を増やすこと。シンプルに集客的な部分ですね。基本的な認知・集客は他のビジネスと同じだと思います。ポーカー市場や文化の開拓と定着。そういう基本的なところだと思います。ビジネスモデル的にもそこまで難しいこともなく、基本的なことをしっかりやることです」
Q:さきほどの比嘉さん自身がポーカーが強いというのも集客になっていますか?
「それはもちろんあります。ですが、正直そのケースはすごく特殊で、オーナーが強い店はあんまりないと思います。しかも私は濃密な、本場の欧米でプレイするところからスタートしていて、ポーカー歴も長いです。あくまで特殊な例ですが、自分がポーカーで実績を残し、強くなるというのは集客や知名度的にも意味はあります。」
ディーラーの重要性について
Q:ディーラーも大事なように思えるんですが、実際はどうですか?
「本来、ディーラーはカードを配ってゲーム進行してくれればよい存在なので、そこまでうまさとか速さとかを求めなくてよい。つまり、円滑にゲームの進行をしてくれればよい、というのが海外。ですが、国内ではお金を賭けないので競技性※が強くなっていきます。あと、日本特有のサービス業みたいなところ(おもてなし・接客など)に対する視野の高さが相まって日本国内のディーラーレベルは自然と高いです。」
※お金を賭けられる国では競技としても盛んなため、お金を賭けることができない日本では、楽しむことや娯楽的要素が少なくなってしまいがちなようです。逆に、IR事情や法が整備されれば、娯楽的要素も増える分、更なるチャンスがあるとも解釈できます。
Q:コミュニティ要素があるということで、会話を盛り上げるっていうのもありそうですね?
「まさにそうです。配りながら話したりとか、競技性があるからゲームの進行はテキパキ早くしなきゃいけないなど、日本では求められることが結構あります」
スタッフの採用について
Q:そういったスタッフをどのように採用してるとか工夫などはありますか?
「基本的なバイトの募集で問題なかったですね。先ほどにもありましたが、本来はゲーム進行をしてくれることが最も重要で、そこから現場で自然と育っていくように感じます。学生で元々ポーカーに興味ある人の応募が多く、辞めずに定着している人も多いです」
未来の参入者へ向けて一言
Q:最後に未来の参入者に向けてメッセージをお願いします。
「ポーカー市場はまだまだ成長市場ですから、市場のパイの取り合いをしにいくっていう感じではなくて、まずはやはり一緒に市場を盛り上げてくれると嬉しいです。あとは、基本的にはポーカー自体が楽しいものですから、本当に1人でも多くの人に知ってもらえるように一緒に頑張っていけたらいいなと思います」
ポーカーハウスとビジネスモデルに関するまとめ
今回の取材で、当時の仙台の少ないポーカーハウスと市場の流行を見据えた開業の経緯や、比嘉さん自身がシンプルに必要としていたという究極な理由と背景を知った。
また、プレイヤーとしても店舗オーナーとしても信頼され、大会を企画開催したり、自身もプレイヤーとして国内や海外で活躍したりと、東北だけでなく日本のポーカーシーンにインパクトを残している。
そんな比嘉さんは開業した後悔は一切なく、ビジネスと趣味の両面でむしろ開業してから充実感を得ており、アミューズメントカジノのビジネスモデルはバーやゲームセンターなどと比べると、コスト面やポーカー自体のポテンシャルを含めかなり優位性があると感じるのであった。
一方で、ビジネスモデルやゲームの面白さとしての優位性はあるが、「集客や認知への課題」「ギャンブルという悪いイメージの払拭」「法律の整備や解釈」などが経営や業界を盛り上げるための鍵となるのでしょう。
取材日2024年1月6日
執筆者:武藤 匡平 監修者:中小企業診断士 居戸 和由貴