マイ・パーパス(My Purpose)は中小企業にとってネクスト・トレンドとなる

近年、パーパス(企業の存在意義)を掲げる企業は急速に増えてきました。大手企業だけではなく中小企業でもパーパスを掲げて事業に取り組む事業者も少なくありません。最近パーパスのブームの中でマイ・パーパス(個人の存在意義)というムーブメントが登場しています。本記事では、中小企業がマイ・パーパスにどのように向き合えばいいかを考察します。

目次

マイ・パーパス(My Purpose)とは?

マイ・パーパス(個人の存在意義)はさまざまな文脈で定義することができます。話を簡単にするために本記事では、マイ・パーパスをビジネスの文脈で考えます。具体的には、個人のCAN(できる)、WANT(やりたい)、MUST(するべき)の3つが重なった部分であると考えます(下図参照)。

冒頭でも述べたように、パーパスを掲げる会社は増えていますが、マイ・パーパスを推奨する会社はまだ少数です。しかしながら、個人のパーパス(マイ・パーパス)と企業のパーパス(コーポレート・パーパス)はお互いが重なる部分を増やすことによって、企業の利益に貢献します(下図)。つまり、会社と個人の存在意義が共鳴するところを見つけるということですね。

次章では、中小企業がマイ・パーパスを活用することにより、どのようなメリットがあるかを解説します。

マイ・パーパス(My Purpose)を中小企業はどのように活用すべきか?

中小企業でマイ・パーパスを活用しているのはごくわずかだと思います。裏返せば今、マイ・パーパスを中小企業が推奨することにより、他の企業と比べたときに先行利益を得ることができます。本章では、中小企業が具体的にどのようにマイ・パーパスを活用するのか解説します。

採用にマイ・パーパスを活用する

どの中小企業も人手不足が叫ばれ、優秀な人材の採用に苦心しているのではないでしょうか。今の求職者は収入や地位も大切ですが、働くことに意義を求める傾向が強いです。たとえば、サステイナブルな(持続可能性のある)事業を展開している企業は採用においても訴求力が高まっています。

そのような労働市場の環境を念頭に置くと、他社に先んじてマイ・パーパスの取り組みを進めておくのは、採用において大きな優位性となるのではないでしょうか。一例をあげれば、採用のプロセスに求職者がマイ・パーパスを考えるワークショップを取り入れ、それが自社に入社することで実現することができそうであれば、入社への強い動機づけになります。

マイ・パーパスのような新しい社会的取り組みに積極的に力を入れていれば、優秀な人材が自社に惹かれるのも不可能ではありません。ただし取り組みは見せかけのものではなく、真剣に取り組まないと、求職者から形だけであるとむしろマイナスの印象を持たれるかもしれません。取り組むなら、全力でマイ・パーパスを推奨して、採用に生かしましょう。

ブランディングとしてマイ・パーパスを活用する

採用の話と重なる部分も多いですが、マイ・パーパスに前向きに取り組むことによって、働き方に対して先進的であるというブランディングをステークホルダーにすることが可能です。企業のパーパスは、すでに多くの企業が取り組んでいてすでに目新しさはありませんが、マイ・パーパスはネクストトレンドになる可能性を秘めており、積極的に活用したいところです。

マイ・パーパスを推奨していくにあたり、すでにマイ・パーパスに関する発信を行っている企業の事例を参考にするとよいでしょう。後ほど、大手企業の例にはなりますが、マイ・パーパスの取り組みが注目を集めている企業の成功事例を紹介します。ぜひ自社のブランディングにマイ・パーパスの活用を検討しましょう。

営業のモチベーションを高めるのにマイ・パーパスを活用する

マイ・パーパスの本来的な役割として、働く人一人ひとりのモチベーションを高く保つ効果があります。マイ・パーパスをきちんと持ち職務にあたることで、外発的動機ではなく内発的動機に基づいて仕事を考えるようになります。それによって、生産性や満足度の向上につながるでしょう。

モチベーションが非常に大切な業務のひとつに営業があります。ノルマという数値だけを目標に日々の地道な営業活動を続けていくのには自己規律が必要です。マイ・パーパスを営業の社員一人ひとりに設定して、それに基づいた評価や指導をすることによって、営業の成果も大きく改善できる可能性があります。

マイ・パーパス運用の成功事例3選(大手企業)

マイ・パーパス運用の成功事例を大手企業にはなりますが3社あげます。どの企業もマイ・パーパスを浸透させるために独自の方法を用い、採用やブランディング、営業などへとポジティブな効果を生んでいます。まずは代表的なマイ・パーパスの活用法を概観してはいかがでしょうか。

SOMPO

出典:MYパーパス | SOMPOホールディングス

SOMPOのパーパスは「“安心・安全・健康のテーマパーク”により、あらゆる人が、自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会を実現する」です。これに加えて、SOMPOは「WANT(内発的動機)」「MUST(社会的責務)」「CAN(保有能力)」の重なりを見つけてマイ・パーパスを考える方法を進めています。SOMPOのパーパスとSOMPO社員一人ひとりのマイ・パーパスの交点を見つけることで、成果を出しつつもエンゲージメント高く働くことを可能にしています。SOMPOは、マイ・パーパスに関するリーディング・カンパニーといっても過言ではなくブランディング効果は高いです。

EY Japan

出典:My Purposeの実現につながるEYでの働き方

「ピーポー・ファースト(人間第一主義)」に取り組むのはEY Japan。外資系コンサルティング・ファームらしくバックグラウンドが多様なメンバーが自身の能力を最大限に発揮するために、マイ・パーパスを掲げて具現化しています。ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス(DE&I)が当たり前になる世界の実現に向けて、マイ・パーパスを上手に活用する先進企業のひとつだといえるでしょう。

富士通

私×Purpose~子どもたちの未来に向けて~

富士通はパーパスを「わたしたちのパーパスは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくことです」としています。そして、マイ・パーパスを主に採用に活かしている先進企業のひとつです。かつては、入社前に社員の働く意義ともいうべきマイ・パーパスを検索できるなんて想像もできませんでした。富士通の採用ページでは、マイ・パーパスとその背後にあるストーリーを検索できるサーチボックスを設置。求職者のロールモデルとなるべき先輩のマイ・パーパスをオンラインで簡単に知ることができます。これから採用以外にも、ブランディングやマーケティングなどにマイ・パーパスの文化を活用していくことは難しくないでしょう。

まとめ

本企業では、マイ・パーパス(My Purpose)について解説しました。マイ・パーパスの定義から活用法、成功事例を説明したことで、イメージが具体的に湧いたのではないでしょうか。中小企業診断士事務所 ハッシュタグでは、パーパスに関するご相談を受け付けているので、ぜひ気軽にご相談ください。

文・Harmonic Society株式会社CEO師田賢人/監修・中小企業診断士事務所代表居戸和由貴

監修者
ハッシュタグ居戸和由貴
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居戸 和由貴

【中小企業診断士】

生命保険会社、人材会社、戦略コンサルタント会社での経験を経て、2021年に中小企業診断士として独立。強みであるマーケティングとテクノロジーを軸に、中小企業の売上拡大を目的として活動

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この記事を書いた人

【Harmonic Society株式会社 CEO】
外資系コンサル、Webエンジニア、Webライター、フォトグラファーを経て、2023年にHarmonic Society株式会社を設立。企業の経営の悩みを言葉で解決している。一橋大学商学部卒。

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