中小企業ならではのブランディング施策とは?マーケティングとの違いも解説

ブランディングとマーケティングは、一見するとその成果が明確には見えにくい分野です。そのため、多くの中小企業がこれらの施策の優先度を低く見てしまうことが少なくありません。しかし、ブランディングを上手く行うことで中小企業が得られるメリットは、実は多くあります。本記事では、中小企業のブランディングをテーマに、マーケティングとの違いやブランディング施策のメリット、フレームワークなどを解説します。

目次

ブランディングとマーケティングのざっくりとした違い

みなさんは、マーケティングとブランディングの違いをきちんと説明できるでしょうか? 正直なところ、正確な定義があるわけではありませんが、両者の違いが直感的に理解できるように、下表に特徴をまとめました。

 マーケティングブランディング
目的商品・サービスの販売顧客との信頼構築
時間軸短期であることが多い長期であることが多い
一施策あたりの予算少ない〜普通中くらい〜多い

上表を見ればわかるように、マーケティングとブランディングには目的・時間軸・予算の視点から違いがあります。どちらを今力を入れるべきかは、その目的とかかる期間、かけられる予算に応じて判断することができます。ただもちろん、マーケティングをしていて顧客との信頼構築が醸成されたり、ブランディングをしていて商品・サービスの販売促進になるケースは非常に多いため、あくまでも頭の整理だと考えてください。

強いブランドを持つメリット

強いブランドを持つことは、他社との明確な差別化を生み出し、その結果、顧客のロイヤリティを高める効果があります。高いロイヤリティを持つ顧客は、自らの経験を他者に口コミとして伝える傾向があり、さらには関連する商品やサービスへの購入(クロスセル・アップセル)も増加します。このような一連の流れは、顧客一人当たりの生涯価値(LTV)を向上させる大きな要因となります。

また、直接的な売上に貢献しなくても、社外向けではステークホルダーからの信頼を高めたり、社内向けでは従業員のエンゲージメントを高めるなど、数値では測れないメリットがあるのも強いブランドの特徴です。財務諸表では、ブランドの力は軽視されがちですが、次第にこの傾向を変えていこうとする流れもアカデミックを中心に活発に議論されています。

ブランディングへの理解を深める2つの道具

ブランディングへの理解を深めるために、2つの道具(フレームワーク)を紹介します。有名なものですので、もうすでに知っている方も多いと思いますが、これらを上手く活用することで、自社のブランディング施策に一貫性をもたらすことができるため、非常に大切な視点を提供してくれます。では早速見ていきましょう。

カスタマージャーニーマップ

(BtoBのSaaS商材のカスタマージャーニーマップの例/筆者作成)

カスタマージャーニーマップとは、顧客のジャーニー(旅)と自社との接点(タッチポイント)を洗い出し適切な施策を実施することで、UXあるいはCX(※)を高めることを目的として作られるフレームワークです。

※UX(User Experience)とCX(Customer Experience)は同じような文脈で使われ顧客体験という意味

上図はフェーズ毎に、「感情」「行動」「施策」の例を書いたものです。必ずしもこれが正しいとは限らず、ペルソナの属性や自社のコア・コンピタンス(競争力の源泉)によって、それぞれ異なるマップが出来上がります。

ダブルファネル(デュアルファネル)

(筆者作成)

ダブルファネル(デュアルファネル)とは、パーチェスファネル(顧客が製品やサービスを購入するまでのプロセスを表すモデル)とインフルエンスファネル(顧客が製品やサービスのロイヤリティを高めていくまでのプロセスを表すモデル)を統合的に考え、顧客のLTVを最大化させる目的で考えられたフレームワークです。上図の緑の部分がパーチェスファネルと呼ばれ、下に行くほどユーザー数が減ります。これに対して、上図の黄の部分がインフルエンスファネルと呼ばれ、下に行くほど売り上げが増えます。ファネルの下に行くほどロイヤリティが高いことを意味しています。

中小企業におすすめのブランディング施策を3つ紹介

中小企業は、大手企業に比べ、マス広告への出稿が資金的に厳しいです。しかし、知恵を絞れば予算を多くかけずに、中小企業ならではの独自の強みを最大限に生かせるはずです。特に、地域に根ざした特色や、顧客との距離が近いことは、中小企業の大きなアドバンテージと言えます。また、最新テクノロジーの活用を通じて、これらの強みをさらに強化し、競争力を増す方法も探索します。

1.地域性を生かしたブランディング

中小企業の強みのひとつは、地域に根ざしたビジネスや独自性であることが多いです。この地域性を生かして、その土地の文化や歴史、特色をブランドストーリーに織り込むことで、他の大手ブランドとは一線を画した独自のブランドイメージを築くことができます。

2.直接的な顧客とのコミュニケーション

中小企業は大企業と比べて、顧客との距離が近いことが多いです。SNSや店舗での対話など、直接的なコミュニケーションを大切にし、顧客の声を取り入れて商品やサービスの改善、またはブランドメッセージの策定に役立てることができます。これにより、顧客の信頼を勝ち取りやすくなります。

3.最新テクノロジーの実装(やや実験的なアイデア)

中小企業は、大手企業と比べて、柔軟な組織体制や意思決定の迅速さから攻めのブランディングを行いやすい立場にあります。その利点を活かし、最新のテクノロジーを導入することで、独自性を増すことが可能です。ここで、最新テクノロジーを用いた実験的なブランディングのアイデアを3つ紹介いたします。

a.地域性を生かしたトークン・エコノミー

地域の魅力や特色をトークン化することで、顧客の関与度を高め、地域経済の活性化にも繋げることができます。例えば、地域通貨やリワードシステムを導入し、そのトークンを地域のショップやイベントで利用できるようにすることで、顧客の継続的な参加を促すことが可能です。

b.ARと観光を生かした顧客体験の提供

AR技術を活用して観光情報や地域のストーリーを提供することで、訪問者に独自の体験をさせることができます。実際の風景や文化、歴史をARを通じてより魅力的に伝えることで、深い印象を残し、ブランドの魅力を高めることができます。

c.伝統工芸品をNFTとしてVR空間上で販売

伝統的な工芸品やアートの価値をデジタル時代に適応させる方法として、NFTとしての販売が注目されています。VR空間上での展示や販売を行うことで、伝統的な価値を新しい形で伝え、より多くの人々にその魅力を知ってもらうことができます。

まとめ:ブランディングは大手企業だけのものじゃない

本記事では、ブランディングとマーケティングの違いを明らかにしつつ、中小企業のブランディング施策をテーマに、さまざまな視点からフレームワークや施策例、テクノロジーの活用などについて論じてきました。ブランディングといえば、大手企業がやるものという風に考えていた方は、中小企業でもブランディングの視点が大切であることが伝わったのではないでしょうか。この記事をきっかけに、自社のブランディングを再考してみてはいかがでしょうか。

文:Harmonic Society株式会社CEO・師田賢人、監修:中小企業診断士・居戸和由貴

監修者
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居戸 和由貴

【中小企業診断士】

生命保険会社、人材会社、戦略コンサルタント会社での経験を経て、2021年に中小企業診断士として独立。強みであるマーケティングとテクノロジーを軸に、中小企業の売上拡大を目的として活動

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この記事を書いた人

【Harmonic Society株式会社 CEO】
外資系コンサル、Webエンジニア、Webライター、フォトグラファーを経て、2023年にHarmonic Society株式会社を設立。企業の経営の悩みを言葉で解決している。一橋大学商学部卒。

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