中小企業診断士の顧問契約:業務内容、活用メリット、報酬について

本記事では、経営コンサルティングの唯一の国家資格である中小企業診断士との顧問契約について、業務内容や報酬、活用のメリットを解説します。

目次

中小企業診断士の特徴と役割

中小企業診断士の特徴とは

中小企業診断士とは、企業のいわば「お医者さん」のような存在です。

国家資格を持つ中小企業診断士は、企業の経営課題を発見し、その解決のための診断・助言を行います。

その提供するサービスには、コンサルティング支援や顧問支援などが挙げられます。

中小企業診断士はどのように活躍しているのか

中小企業診断士の中には、以下のように様々な働き方があり、そのバックボーンも様々です。

この多様性が、中小企業診断士があらゆる業界や状況に対応できる力を持つ理由の一つとなっています。

・自身でコンサルティング会社を設立している人
・企業の経営者として働いている人
・複数の企業と顧問契約を結んでいる人
・企業の会社員でありながら、活動している人(企業内診断士) など

中小企業診断士の報酬についての考え方

報酬の考え方

中小企業診断士の報酬は、以下のような要素によって変わります。また、診断士との契約形態により、報酬の計算方法も異なります。

・依頼する業務内容:診断士がどのような業務を担当するか
・専門性:診断士が持つ特定のスキルや知識
・経験:診断士が持つ業界や業務の経験
・業務の範囲:診断士が担当する業務の広さ
・業務の難易度:業務の複雑さや困難さ など

報酬相場

報酬の相場は様々で、顧問料やコンサルティング費用などが含まれます。

診断士のサービスも一律の料金ではなく、提供するサービスによって料金が変動します。

具体的な報酬額は診断士や業務内容によりますが、J-SMECA「データでみる中小企業診断士」によると以下の報酬が平均的です。

業務内容1日あたりの報酬(平均)
経営指導97,000円
講演・教育訓練130,000円
診断業務108,000円
原稿執筆5,000円/枚(400文字)
調査・研究49,000円

報酬タイプ

報酬には以下のようなタイプがあります。

・時間単位型報酬:仕事の時間に応じた報酬
・定額報酬:あらかじめ設定された業務内容に対する固定の報酬
・成功報酬:特定の成果が得られた時に支払う報酬

顧問契約の実態

顧問数や出向日数、顧問料については、顧問契約のある中小企業診断士の場合、J-SMECA「データでみる中小企業診断士」によると、平均は以下のとおりです。

顧問先7社
1ヶ月の出向日数4日
1か月の顧問料142,000円

中小企業診断士の業務と報酬

業務の種類

中小企業診断士は、多岐にわたる業務を担当します。具体的な業務は以下のようになります。

業務説明
経営指導・いわば企業の「舵取り補佐」のような役割 ・経営戦略の策定、業績改善、マーケティング、組織運営、人的資源管理などの面でアドバイスを提供
講演・教育訓練・いわば「教師」のような役割 ・経営に関する知識やスキルを伝えるための講演や教育訓練を提供 ・受講者は、企業の経営者や従業員など
診断業務・いわば企業の「医者」のような役割 ・企業財務状況、組織構造、業務プロセス、市場環境などを確認・評価し、問題点や改善の余地を提案
原稿執筆・いわば「作家」のような役割 ・経営に関する記事やレポート、書籍などの原稿を執筆
調査・研究・いわば「リサーチャー」「マーケッター」のような役割 ・特定の業界や市場、技術、経営手法などについて調査・研究

中小企業診断士の年間売上(年収)

中小企業診断士の年間売上は、その年に行った業務の数と種類、また各業務の報酬額によって決まりますが、

J-SMECA「データでみる中小企業診断士」によると、以下の占有率になっています。

年間売上占有率累計
300万円以内12.2%12%
301~400万円以内8.8%21%
401~500万円以内10.3%31%
501~800万円以内19.9%51%
801~1,000万円以内10.9%62%
1,001~1,500万円以内16.3%78%
1,501~2,000万円以内7.5%86%
2,001~2,500万円以内4.1%90%
2,501~3,000万円以内1.9%92%
3,001万円以上6.0%98%
不明2.2%100%

顧問契約とそのメリット

契約形態ごとの支援内容と役割

中小企業診断士との契約には、主に顧問契約、課題解決型契約、相談型契約の3つあり、以下の内容・役割が一般的です。

契約形態   支援内容役割
顧問契約中小企業診断士が一定期間(通常は数ヶ月から数年)企業の顧問として働く際に結ぶ契約です。診断士は定期的に会議に出席したり、経営に関するアドバイスを提供したりします。企業の長期的な成功をサポートすること
課題解決型契約中小企業診断士が特定の問題や課題を解決する際に結ぶ契約です。企業が直面する特定の問題や課題を解決すること
相談型契約中小企業診断士が一定の時間または特定のテーマについて企業からの相談に応じる際に結ぶ契約です。企業が直面する特定の疑問や懸念に対するアドバイスを提供すること

顧問契約締結のメリット

顧問契約には、中小企業診断士と企業の双方に多くのメリットがあります。

[顧問を依頼する立場:企業]

メリット説明
経営の専門的な助言経営に関する専門的な助言を常に受けることができます。
長期的なサポート自社のビジネスモデルを深く理解したうえで、長期にわたるサポートを受けることができます。
外部の視点外部の視点を得ることができます。新たな事業アイデアや解決策の発見、客観的な評価などの効果が期待できます。

上記のほかにも、経営者は孤独な立場になりがちですが、顧問契約により信頼できる相談相手を持つことで、経営者が悩みや問題を共有し、心理的な後ろ盾になるケースも多い様です。

[顧問を引き受ける立場:中小企業診断士]

メリット説明
安定した収入一定期間(通常は数ヶ月から数年)にわたる収入の安定化につながります。
長期的な関係企業との間に長期的な関係を築くことで、企業のビジネスを深く理解したうえで、アドバイスやサポートすることができます。
スキルの活用と向上自身の知識・スキルを活用し、新たな経験を積む機会になり得ます。

顧問契約書の内容と例文

顧問契約書の作成は、重要なステップです。契約書は、診断士と企業の間の期待と責任を明確にし、両者の関係を維持することにつながります。

顧問契約書の中には、通常、以下の項目が含まれます。

・顧問業務の範囲
・機密情報の取り扱い
・顧問報酬と支払い方法
・契約期間 等

以下に、顧問契約書のサンプル例を紹介します。

顧問契約書(サンプル例)


***株式会社(以下、甲という。)と***株式会社(以下、乙という。)とは、乙が甲の「***」のために行う支援に関して、以下のとおり契約する。

  1. 顧問業務の範囲
    ・****
    ・****
    ・****
  2. 機密情報の取り扱い
    甲は、上記支援に必要な資料を乙に提供する。
    乙は、その知り得た情報および企業秘密を他に漏らさぬことを約束した。また、乙は中小企業診断協会の定める中小企業診断士倫理規程を遵守する。
  3. 協力の提供と役割
    乙は甲に対し、本支援のため、顧客管理システム運用支援会社と甲とのミーティングに同席し、必要に応じて甲の経営者または担当者と面談し、支援に当たる。また、必要と思われる書類や情報の提供も行うものとする。甲および甲の従業員は、乙が求める資料提供等、乙の支援活動に対して協力するものとする。
  4. 顧問報酬と支払い方法
    甲は乙に対して、上記支援の顧問報酬として、以下のとおり支払うものとする
    **万円/月(税抜き)
    また、支払方法は、乙の以下指定口座に一括で振り込むものとする。
    金融機関名:***銀行
    支店名:***
    預金種別:***
    口座番号:***
    口座名義人:***
  5. 実費の支払い
    乙が上記支援のために、直接的に費消した旅費その他費用は、実費をそのつど甲が支払う。
  6. 追加プロジェクトの報酬と実費
    甲が乙に対して、上記支援のほか、別途プロジェクト等による支援を要請し、乙が実施するときは、別途その報酬ならびに実費を、甲乙協議の上、その都度支払う。具体的な報酬と実費は、プロジェクトごとに見積もりを作成するものとする。
  7. 契約期間
    本契約の期間は、以下のとおりとする。
    令和〇〇年〇〇月〇〇日から令和〇〇年〇〇月〇〇日までの*か月
    期間満了の際は、期間満了に近づいた適切な時期に、甲乙双方の協議のうえ、契約解除または延長、再提案するものとする。
  8. 契約の履行
    甲及び乙は、信義を重んじ誠実にこの覚書を履行し、甲の社業発展に努めなければならない。

以上のとおり、本契約が成立したことを証するため、本書を2通作成し、甲乙記名押印のうえ、各自1通を保持する。

令和〇〇年〇〇月〇〇日

甲 〇〇県〇〇〇市○○△-△-△

○○株式会社

代表取締役 □□ □□ ㊞

乙 〇〇県〇〇〇市○○△-△-△

○○株式会社

        代表取締役 □□ □□ ㊞

顧問契約活用時の留意点

中小企業診断士の支援は、経営者のビジョンの実現や経営課題の解決に対する一つの手段として価値があります。しかしながら、結果を生み出し、ビジョンを具現化するのは経営者自身の意志と決断です。そのため、中小企業診断士に丸投げするのではなく、診断士と共に問題解決への道筋を描くことが重要となります。

加えて、強固なパートナーシップを構築するためには、中小企業診断士を「助言者」または「伴走者」と位置づけ、その知識や経験、スキルを尊重することが必要です。もし診断士を見下す態度を取ると、その真価を引き出すことは難しくなることも考えられます。

まとめ

本記事では、中小企業診断士の顧問契約について、業務内容や契約形態、報酬などについて触れてきました。

中小企業診断士の顧問契約について知るキッカケになれば幸いです。

執筆者:中小企業診断士 居戸 和由貴

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この記事を書いた人

【中小企業診断士】
生命保険会社、人材会社、戦略コンサルタント会社での経験を経て、2021年に中小企業診断士として独立。強みであるマーケティングとテクノロジーを軸に、中小企業の売上拡大を目的として活動

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