経営者が読むべき名著を分野別で厳選|読書のメリットも解説

経営者が成功を収めるためには、知識の獲得や問題解決につながる洞察力などを学び続けることが絶対的に必要でしょう。

その学びの手段として、読書から多くのヒントや気づきを得ている経営者や実業家の話は、度々耳にしているはずです。

そこで本記事では、経営者が読むべき名著を経営に重要な分野別で(組織体制、経営戦略、マーケティング、リーダーシップ、思考の整理など)厳選します。

さらに、経営者にとって読書がもたらす多彩なメリットについても解説し、新たな知識と出会うきっかけや、経営者としての成長につながれば幸いです。

目次

昨今、読書離れが進むなかで、名著には先人の経験則や成功・失敗談が詳細に記され、時代が変わっても簡単には廃れない普遍的な知恵がそこにあります。

ここでは、経営のさまざまな課題解決のための知見を得るために、以下の分野別の名著を厳選しました。

■経営組織・体制『ザ・モデル/著:福田 康隆』

■経営論・経営戦略『ユダヤの商法/著:藤田 田』

■マーケティング『小が大を超えるマーケティングの法則/著:岩崎 邦彦』

■リーダーシップ『リーダーシップの旅/著:野田 智義・金井壽宏』

■思考の整理『論点思考/著:内田 和成』

■マインドセット『セレンディピティ点をつなぐ力/著:クリスチャン・ブッシュ』

■クリエイティブ『13歳からのアート思考/著:末永 幸歩』

これらの書籍は、各分野における名著で本質的な学びとなり、一読する価値があるでしょう。

・経営組織・体制

『ザ・モデル/著:福田 康隆』

本書は、著者の福田氏が日本オラクルから米オラクル本社に出向し、アメリカの革新的な営業スタイルなどを目の当たりにし、その経験を経てマルケトの代表取締役社長に就任していくストーリーや出会い、経験則など、経営に関するノウハウが統括的に記されています。

また、本書の冒頭には、ビジネスにおいて重要なのは『再現性』と述べられていて、この本の全体を通じて、ただ理論を理解して終わりではなく、実際に再現するための具体的なポイントや『自分に当てはめて実行する』重要性が随所に感じられます。

営業(分業制・カスタマーサクセスの共業プロセス)、経営戦略・組織体制、マーケティング・インサイドセールス、リーダーシップなど、総合的な経営ノウハウを学ぶことができ、特にSaaS業界や、B2Bマーケティング、営業に悩みを持つ経営者にとって、現状モヤモヤしていることが氷解されるかもしれません。

本書の要点  
☑︎営業を分業にすると、KPIが明確になり効率もあがり、障害の特定も容易になる
☑︎分業には落とし穴もあり共業が必要で、協力せざるを得ない目標を与えること  
☑︎市場戦略、リソース管理、パフォーマンス管理の3つが焦点となる  
☑︎経営やマネジメントにおいて、大事なのは『実行』その文化が重要  
☑︎人を動かすのは、『利益と尊敬と少しの恐怖』その潤滑油がユーモア  

・経営論・戦略

『ユダヤの商法/著:藤田 田』

本書は、昭和の時代を実業家として活躍した日本マクドナルドの創業者である藤田氏の、1972年に刊行された古い本ですが、現代にも通ずる普遍的な商売の基礎が学べる一冊です。

こちらは、孫正義氏が16歳の時に影響を受けた著書で、この本に感銘を受け藤田氏に会いに渡米したのは有名な話です。約50年前の話で、現代とは乖離している部分もありますが、逆にそのギャップが面白いのと同時に、『儲けること』や『商売』においての原理原則が詰まっているため、戦略を立てる上での本質的な学びになります

また、藤田氏の熱烈な反骨精神が滲み出ている一冊でもあり、この現代において過激と感じられる主張も多々あります。ですが、この姿勢には、日本の商人に一石を投じることで、世界的に活躍する日本人を増やしたいという想いがあると考察できます。

本書の要点
 ☑︎『七十八対二十二の法則』というユダヤの絶対に損しない商人の法則がある  
☑︎人生の目的は、『おいしいものを心ゆくまで食べるために働きお金を儲ける』  
☑︎納得できるまで、人の話を聞き質問をする  
☑︎幼少期から徹底した金銭教育を受けている  
☑︎日本人のお金や商売への苦手意識をユダヤの商法から学ぶべき  

・マーケティング

『小が大を超えるマーケティングの法則/著:岩崎 邦彦』

本書の著者岩崎氏は、静岡県立大学経営情報学部で、特に地域に関するマーケティング問題を主な研究テーマとしている教授です。また、国民金融公庫で勤め、中小企業を支援した密接な経験から、小さい企業のマーケティング戦略を非常に論理的に解説しています。

中小企業と大企業を対比しながら、小と大の戦略の違いや、小さい企業の強みや勝ち筋、小さい企業に求められていることや価値などを、実際の調査やグラフ推移などを活用して、論理的かつわかりやすく記されています。

この本は中小企業の経営者にとって、自らの『強み』や『価値』を改めて定義するきっかけとなり、それらを活かしたマーケティングの再構築に役立つはずです。

本書の要点  
☑︎マーケティングとは、『顧客を創造し、維持するための活動』  
☑︎小さな企業の強みは、個性。サービス、専門性、独自性などで、大企業と異なる。  
☑︎小さな店にひかれる人々をターゲットにする  
☑︎ポイントは、『ほんもの力、きずな力、コミュニケーション力』  
☑︎マーケティング成果=意識(やる気)×行動(やり方)×継続  

・リーダーシップ

『リーダーシップの旅/著:野田 智義・金井壽宏』

本書は、リーダーシップ塾を主宰するNPO法人理事長である野田氏の現場から吸い上げた理論的な考察と、日本の経営学者(組織行動論など)である金井氏の研究者という立場からの専門的な意見が展開されており、様々なテーマに沿ってリーダーについて貴重な話が記されています。

この本は単なるビジネス本ではなく、哲学的にリーダーシップのあり方や、リーダーに必要な要素について、思慮深く考察されているので勉強になるはずです。

「リーダーシップとは一体何なのか?」と悩む多くの経営者にとって、リーダーシップという曖昧に感じている概念を改めて定義してくれるいい気づきとなるでしょう。

本書の要点  
☑︎リーダーシップとは「見えないもの」を見る旅である  
☑︎リーダーは用意されたものではなく、ある一人の人間が新たな境地を目指すこと  
☑︎リーダーシップとマネジメントには違いがある  
☑︎困難を乗り切る鍵は、「夢と志」があるかどうかである  
☑︎リーダーに必要な資質は、「構想力、実現力、意志力、基軸力、人間力」  

・思考の整理

『論点思考/著:内田 和成』

本書は、ロングセラーになった『仮説思考』の著者であり、ボストンコンサルティンググループ(BCG)元日本代表としてキャリアを積んできた内田氏が、正しい論点を導きだすための豊富な知見が随所に盛り込まれています。

『論点思考』とは、解くべき問題を決めるプロセスのことを意味していて、この本では、自分で定めた問題がそもそも間違えていたらどうするべきなのかが論じられています。

「論点がズレている」「論点を絞って」など指摘された経験がある経営者やビジネスパーソンにおいて、本書は問題解決のための論点の定め方や思考の整理、その基盤を学べるでしょう。

本書の要点  
☑︎そもそも初めの問いや論点を間違えていたら、解決や成果はだせない  
☑︎企業の問題をすべて解決するのは不可能なため、課題や論点を絞るべきである  
☑︎論点は、状況や情勢によって変化するため、常に学び経験を積む必要がある  
☑︎目の前にある問題=論点ではなく問題の原因こそが論点  
☑︎論点を設定する際は、解決できるかどうかにこだわるべきである  

・マインドセット

『セレンディピティ点をつなぐ力/著:クリスチャン・ブッシュ』

セレンディピティ点をつなぐ力、「運」を結果につなげる方法と聞くと、スピリチュアルで不確実な方法なのかと不信感を抱くかもしれませんが、むしろこの考え方は、科学や研究などの現場で広く認められている考え方です。

例えば、レントゲン、ペニシリン(抗菌薬や抗生物質など)、ゴムという素材、電子レンジなど、これらの科学的発見や成功はたまたま運よく発見された成功事例で、運や偶然の産物が密接に関連しているのです。その運を結果につなげるためには、幸運との出会いに気づく準備や、偶然に対して積極的な行動をする意識などのマインドセットが必要と記されています。

本書では、偶然の出来事と行動がもたらした幸運な数々の成功事例を紹介し、その重要性を説きながら、幸運をつかむためにする行動や心構えが学べて、本書を読むことで、運をつかむためのマインドセットとなり、点と点をつなげ、運命を成功の道へと切り開く気づきが得られるはずです。

本書の要点  
☑︎セレンディピティは「予想外に事態での積極的な判断がもたらす幸運な結果」
☑︎偉大なビジネスも世界を変えた科学的発見も、計画通りにできたものは少ない  
☑︎思い返すと予想外の事態への行動が人生を変えているが、その逆は後悔  
☑︎セレンディピティを遠ざけてしまっているバイアスに気づくべきである  
☑︎点と点を結びつけるという思いがあるほど、セレンディピティにつながりやすい  

・クリエイティブ

『13歳からのアート思考/著:末永 幸歩』

最後に、必要な情報が確実に得られるノウハウ本やビジネス本とは異なる本の紹介になりますが、本書は逆にビジネスパーソンこそ気づきになるような一冊です。また、アート市場は政府もその市場価値に注目し、活性化させようと注力している潮流もあります。

アート思考に関する書籍や記事は多く散見されますが、本書のアート思考は、「自分だけの視点でものを見て、自分なりの答えをみつけだす」探究と思考のプロセスのことを定義しています。

経営者や企業としての、革新的なアイディアやゲームチェンジは、本書で紹介しているアーティストたちの、固定概念を覆してきたその探究心と思考力に通じるものがありますし、大人になると失われる、自分で考える力を取り戻すヒントになるはずです。

本書の要点  
☑︎ビジネス、学問、どの分野でも、「自分なりの答え」をもつ人が活躍する  
☑︎すぐに調べられる世の中で、自分で考える力は大人になると失われる  
☑︎美術や芸術、現代アートは自分で考える力を鍛える  
☑︎愛すること、愛する仕事をみつける重要性   ☑︎正解を導くだけの人と、問いそのものを生み出す人の違い  

名著の紹介を通じて、経営者がビジネスの各分野における必要な情報となる書籍を紹介しました。

しかし、読書は目的のための単なる情報収集以上の価値もあります。

ここでは、経営者が読書により、著者の人生経験や、経営の経験を擬似体験することで得られるヒントと下記3つの具体的なメリットを解説します。

■経営課題解決の経営の意思決定につながる
■市場の理解につながる
■知識やスキルの向上につながる

経営課題解決の経営の意思決定につながる

経営者が読書をする大きなメリットは、経営課題の解決につながることです。

読書は新たな知識や経験を得る機会になり、これらの知見は経営の意思決定にヒントを与えます。

例えば、経営課題についての解決策や戦略を練る際に、著者の人生経験、経営の知識や経験を疑似体験することで、ご自身の会社での意思決定につながるヒントが得られるはずです。

さらに、専門書やビジネス書からは実践的な手法や課題への直線的な情報も得られ、これらを経営の意思決定に取り入れることで判断材料が増えます。

したがって、読書は経営課題解決のための意思決定に活かせる知識と洞察力を養えるというわけなのです。

市場の理解につながる

また、経営者が読書をするメリットとして、市場の理解につながるということも含まれます。

書籍や専門書を通じて、市場動向や競合の状況、海外の事情など、ショート動画やSNSのポストでは得られないより専門的な情報を入手できます。

例えば、マーケティングや経営戦略の書籍を読むことで、顧客行動や心理の理解、求められる需要や価値など科学的・心理的にエビデンスのある効果的な手法を学ぶことができます。

また、業界のトピックに特化した書籍を読むことで、市場動向や競合他社の戦略、成功/失敗パターンなどにも触れられるでしょう。

これらにより、経営者は市場のトレンドや変化を思慮深く考察することができ、製品やサービスの開発やマーケティング戦略の改善につなげられるはずです。

読書は市場を達観するための情報が得られ、戦略を練る上で必要な市場理解と貴重な情報源となります。

知識やスキルの向上につながる

さらに、経営者が読書をするメリットとして、知識やスキル自体の向上も挙げられます。

読書は新たなアイデアや知識、スキルとの出会いとなり、本の内容を追体験することで、経営者としても人としても成長につながるはずです。

例えば、リーダーシップの書籍では、チームマネジメントやコミュニケーションなどの知識や体験が得られます。

読書は、それぞれの経営者が必要とする幅広いスキルを磨くための手段であり、数千円で普段出会えない人物の貴重な話をインプットできるのはありがたいことです。

このように知識やスキルの向上は、企業の更なる発展に直結し、経営者自身のキャリアの発展や成長にも寄与します。

最後にまとめですが、経営者が読書をすることによる3つのメリットは、『経営課題の解決とその意思決定につながる』、『市場の理解につながる』、『知識やスキルの向上につながる』という3つです。

読書は先人たちの血肉が詰まった経営論や戦略を学ぶことができ、著者の実際の経験や、経営においての成功/失敗談を擬似体験することで、経営の意思決定に役立つヒントが得られます。

さらに、マーケティングやリーダーシップなど、より専門的な書籍を読むことで、顧客行動や心理の理解、求められる需要や価値など、科学的・心理的にエビデンスのある効果的な手法を学ぶことができます。

本記事で紹介した名著は、経営戦略やリーダーシップ、マーケティング、思考の整理、マインドセット、クリエイティブまで幅広く、経営者自身としても、個人としても、企業としても成長につながるでしょう。

結果として、読書は企業の発展だけでなく、経営者個人のキャリアにもプラスの影響を与える重要な機会であり、継続する価値のある活動と言えます。

執筆者:武藤 匡平 監修者:中小企業診断士 居戸 和由貴

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この記事を書いた人

【中小企業診断士】
生命保険会社、人材会社、戦略コンサルタント会社での経験を経て、2021年に中小企業診断士として独立。強みであるマーケティングとテクノロジーを軸に、中小企業の売上拡大を目的として活動

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