ドローンのすすめ(インフラ点検編)|ものづくり補助金の活用例

ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発等による生産性向上に役立つ設備投資等を支援するための補助金です。

昨今の革新的機器、またそのサービスの代表的なものとしてドローン(無人航空機)が挙げられます。さまざまな分野で積極的に新たなドローン活用が行われています。その中でも、前回の記事「ドローンのすすめ(測量編)|ものづくり補助金の活用例」では、ドローンを活用した測量によって、従来の手法と比較して測量に要する時間や経費の縮減、成果物の高付加価値化が実現することが分かりました。

本記事では、ドローンの活用が業務効率の飛躍的な進歩に資する業界として「インフラ点検」に注目し、最新の利用動向を紹介します。本記事が、ドローンによる点検を検討しておられる事業者の方々にとって、前向きな検討の材料となれば幸いです。

目次

社会インフラの現状・点検の必要性および将来性

社会インフラの現状

国土交通省では、今後の社会資本の維持管理・更新のあり方について検討するため、社会資本整備審議会・交通政策審議会の小委員会として「社会資本メンテナンス戦略小委員会」が立ち上げられました。

2013年2月に開かれた第5回小委員会の資料「社会資本に関する実態の把握結果(試行版)」によれば、定期的な点検が必要な国内の社会インフラの総数は次表の数に上り、施工後30年を経過したものも少なくありません。だからこそ、これら全ての社会インフラは一定の周期により点検、検査を必要としているのです。

分野対象施設数量
道 路橋 梁(橋長2m以上)約699 000橋
ト ン ネ ル約10,300本
舗 装約3,100㎡

 
河 川河 川 管 理 施 設29,731施設
砂 防砂 防 堰 堤、床 固 工95,675基
下 水 道管 渠約430,000km
処 理 場約2,100箇所
港 湾港 湾 施 設約44,000施設
公 営 住 宅公 営 住 宅2,170,649戸
公 園都 市 公 園 等101,111施設
海 岸海 岸 堤 防 等7,989km
空 港空 港98空港
航 路 標 識航 路 標 識5,380基
官 庁 施 設官 庁 施 設約48,466千㎡

また、この表では把握の対象となっていませんが、鉄道も重要な社会インフラであり全長からも施策が必要なことは明らかです。また、大規模な太陽光発電所では目視による点検は時間、技術の両面から不可能であることから、ドローンをはじめとする新技術が点検業務のメインアクターとなっていくことでしょう。

※ 「数量」は定期点検が必要なインフラの数で、既に老朽化している数ではありません。

分野対象施設数量
鉄 道線 路約27,700km
太 陽 光 発 電太 陽 光 パ ネ ル約229.211㎢

点検業務の必要性

前掲の社会インフラは、地方公共団体(都道府県・市区町村)が管理している施設が大部分を占めています。総じて財政状況が芳しくない中、頻繁にインフラ点検を行うための予算を大胆に要求・確保するのはたいへん困難なことです。そのため、点検せずとも危険が顕在化してしまうまで放置するなどという場合も珍しくありません。

当然のことながら、点検作業なくしては各社会インフラは求められる水準・効率の機能を維持できないばかりか、放置すると設備の劣化を急速に進行させてしまうリスクもあります。インフラの種類によって異なりますが、最悪の場合には人の命を左右することにもなりかねません。2012年12月の笹子トンネル天井板落下事故は未だ忘れ難い悲劇です。また、点検を怠ると経済的な影響をもたらすこともあり、例えば太陽光発電所のように大きな機会損失につながることもあります。

これらのことから、社会インフラの点検業務は、私たちが社会生活を営むにあたって必要かつ重要なものであると断言できるでしょう。

点検業務の将来性

2018年11月30日付けの「国土交通省所管分野における社会資本の将来の維持管理・更新費の推計」によると、国内のインフラ維持管理の市場規模は約5.2兆円と推定されており、拡大基調にあると見られている。これは、主に次の2点による予測と考えられます。

  • 社会インフラは1960〜1970年代の高度経済成長期に集中的に整備されたものが多く、今後一斉に老朽化が進むと考えられる。そこで適切な維持管理の起点となる点検業務が重要性を増す。
  • これに加え、国土交通省は2019年2月に橋梁やトンネルの「定期点検要領」を改定し、以前から管理者の負担となっていた近接目視による点検方法について、これを代替する新技術を認めた。翌3月には再び点検要領を改定し、点検や診断がドローンやロボットでも可能となった。

新技術ドローンによる橋梁点検の実施について」(国土交通省)

こうして、毎年度5兆〜6兆円の予算が、ドローンをはじめとした新技術を活用した点検ビジネスの舞台になると見込まれるところです。

産業用ドローンを活用した点検の概要

ドローンを活用した点検作業には、人が立ち入りにくい場所の点検が可能になることや、点検作業の短時間化などのメリットが挙げられます。さらには、以下のように、温度を感知できる機構を搭載することで、目視ではできない点検を行うことができます。

赤外線カメラを搭載したドローンによる外壁調査

建築基準法に基づく調査の中で、例えば目視で外壁の一部を調査しても、何も異常はないように見えることがあります。しかし、赤外線カメラを利用した外壁調査は、対象物との温度差を利用します。そのため、外壁タイルやモルタル(砂とセメントと水とを練り混ぜて作る建築材料)に「浮き」(外壁塗装の塗膜が外壁から完全に剥離してしまい、浮いてしまっている状態のこと)ができると隙間の空気が温められるため、赤外線カメラで確認すると、タイル浮きと思われる部分の温度が上がっており、不具合を発見することができます。

さらに、建築基準法に定められた「12条点検」(定期報告制度)にもドローンによる調査方法が国土交通省により認められています。その結果、同じ点検でも費用が削減できるでしょう。

12条点検(定期報告制度)とは?建物全体を調査する必要はある?

(国土交通省公衆管理団体ドローンフロンティア)

サーマルセンサー搭載ドローンによる太陽光パネル点検

いわゆる「メガソーラー」と呼ばれる太陽光発電所では、最低でも約4,000枚の太陽光パネルが設置されています。そこで、発電効率のため、人力では洗浄に数日かかるところ最新鋭の高速洗浄機を導入するなどの工夫をしたり、監視カメラを活用し、人力での点検監視を実施する事業者もおられます。

しかし高精度カメラによる監視であっても、不審者の侵入や、太陽光パネルに物理的に大きな破損が生じた場合、つまり表層的に生じている事柄をチェックすることができるのみにとどまります。

そこで、サーマルセンサーを搭載したドローンを活用すると、-10℃〜400℃程度までを撮影画像で捉えることができ、太陽光パネルに生じた電機的なトラブルを迅速に捕捉し対策することができます。

ドローンによるインフラ点検はものづくり補助金の対象

ドローン機体本体も、ドローンに搭載する機器も高額な設備投資となりますが、経済産業省が公表している令和5年度ドローン関連予算では、「開発等関連予算」「導入・実証等関連予算」いずれの筆頭にも、ものづくり補助金による支援が明記されています。

そして、以下のようにドローンを用いたインフラ点検事業が採択された実績があります。

採択結果より(第11次締切分〜第13次締切分)

採択結果が発表された直近3回の公募では、合わせて26者がドローンを活用したインフラ点検と関係のある事業で採択を勝ち取っています。

それぞれの事業計画名からは、さまざまなインフラ点検の現場でドローンを活用することがうかがわれます。また、AIとの連携をうたっているものもあり、さらにはDX推進を掲げている事業計画も目立ちます。今後のインフラ点検でドローンの活躍がますます期待されるところです。

第11次締切分

2022年10月20日に発表された第11次締切分の採択結果では、採択された2,786者のうち、次の11者がドローンを活用したインフラ点検と関係のある事業で採択されています。

都道府県   称号又は名称事業計画名
北海道株式会社WNK最新ドローンによるスマート農業の拡大とインフラ点検参入の実現
秋田県株式会社岡部総合技術ドローン導入で既存業務の効率化と洋上風力発電設備点検への進出
群馬県株式会社エイシン洗浄ロボット・赤外線カメラ付ドローン点検で太陽光パネル維持新サービス
埼玉県JP Drone株式会社AIを活用したドローンの点検分野でのアイ・コンストラクション実現
東京都SKリフォームプロデュース産業用ドローンによる外壁診断技術サービスの開発
新潟県株式会社かみえちご測地各種センサによるROV(水中ドローン)を使用した水中構造物点検
長野県飯田ポリッシング株式会社ドローンを活用したインフラ点検と農薬散布の代行サービス
愛知県菅沼・エンタープライズ有限会社水中ドローンを活用した配水池点検・調査サービスの開発
三重県いちどろ合同会社高精度赤外線カメラ搭載ドローンを用いた企業向け建物設備点検事業
兵庫県中外建設株式会社ドローンによる高精細画像と赤外線画像による建物検査事業
福岡県彩唯技研株式会社産業用ドローンによるインフラ・設備点検におけるデジタル化事業

(出典:ものづくり補助金 第11次締切 採択案件一覧

第12次締切分

2022年12月16日に発表された第12次締切分の採択結果では、採択された1,885者のうち、次の7者がドローンを活用したインフラ点検と関係のある事業で採択されています。

都道府県  商号または名称  事業計画名
秋田県株式会社光システムAI搭載ドローンと最新サーモカメラによる保守点検業務の単能機への挑戦
東京都加賀屋産業株式会社ドローン×圧縮機による備蓄・検査面での災害対策ビジネスモデルの創出
和歌山県岩本石油株式会社DX化に向けた最新LiDAR搭載ドローン煙突点検サービス開発
福岡県株式会社キューブドローン×AIによる太陽光発電所の保守サービスDX化への挑戦
大分県小代築炉工業株式会社ドローンレーザー測量・写真測量、ドローン赤外線点検の導入による効率化と新規事業への参入
沖縄県株式会社オカベメンテドローンレーザー計測を用いた3次元維持管理技術サービス
沖縄県ドローンフュージョン株式会社ドローンショーや測量・点検などの最先端ドローン活用サービスの展開

(出典:ものづくり補助金 第12次締切 採択案件一覧

第13次締切分

2023年2月20日に発表された第13次締切分の採択結果では、採択された1,903者のうち、次の8者がドローンを活用したインフラ点検と関係のある事業で採択されています。

都道府県   商号又は名称事業計画名
茨城県株式会社測研茨城ドローンを活用した災害時のICT施工技術の整備と民間事業における技術サービス向上の確立
東京都グリーンブルー株式会社ドローンを用いた飛行観測による立体的な大気観測サービスの開発
静岡県松尾電気保安管理事務所オールインカメラ搭載ドローンによる高精度点検サービス
静岡県KENZ PROJECT測量用ドローンと解析ソフト導入によるドローン事業の強化
京都府株式会社レスキュージャパンドローン・高精度赤外線カメラを用いた建物外壁調査のDX推進事業
大阪府エルメック株式会社産業用ドローンによる太陽光発電所の点検・劣化診断サービス開始
大阪府株式会社那須管財防災、及びインフラ等設備点検に特化したドローン総合サービス
島根県有限会社ヒラオカ屋内点検ドローンによる新市場の開拓及びブランド価値の向上

(出典:ものづくり補助金 第13次締切 採択案件一覧

補助対象経費計上のワンポイント

  • 導入するドローン機体や搭載する設備を取得する費用については、対象経費の区分「機械装置・システム構築費」に計上することができますが、併せて行う改良・修繕・据付けに要する経費も「機械装置・システム構築費」に計上できます。
  • 「機械装置・システム構築費」には機械・装置、工具・器具の「借用」(レンタル・リース)に要する費用のうち、補助事業期間中に要する経費のみを計上できます。ドローンの法定耐用年数は5年、赤外線カメラ・サーマルセンサーの法定耐用年数は6年です。長期リースを利用して経費計上するメリットや、損害保険を利用できる場合もあるなど、条件によってはリースを選択し、補助事業期間中の費用を補助対象経費に計上する方法もあります。

その他にも、事業者の現状によりお得な補助金活用の方法がありますので、ぜひハッシュタグに「お問い合わせ」から気軽にご相談ください。

まとめ

国土交通省は2019年3月、社会インフラ点検の根拠である「道路橋定期点検要領」および「道路トンネル定期点検要領」を改定し、部分的ながら点検業務においてドローンその他の新技術の利用が認められ、点検方法の規定が緩和されました。国土交通省は同時に、新技術利用の手引きとして「新技術利用のガイドライン(案)」を公表しました。そして、新技術の活用拡大のため、技術者の点検作業の全部または一部を代替し、もしくは点検作業を支援できる新技術の性能基準を設定し、2023年3月、その基準を満たした技術は「点検支援技術性能カタログ」にまとめられました。

こうして、ドローンをはじめとする新技術を活用したい企業が、当該カタログを参考に支援技術の活用を盛り込んだ点検計画・手順による点検業務を低コストで提案することも可能となりました。すなわち、前述の規制緩和を端緒として、ものづくり補助金を活用してドローンを取得し、効率的な点検業務に参画するトレンドが始まるのではないでしょうか。

この機会に、インフラ点検業務に携わる事業者様は、ドローンを活用した点検業務にものづくり補助金を役立て、時間・人員等の経営資源の見直しや成果物の高精度化を検討してみてはいかがでしょうか。

とはいえ、補助金申請は何かと複雑で理解しづらいと多くの事業者様が感じておられることでしょう。そこで、「ハッシュタグ」に御社のご意向やアイディアをぜひとも教えてください。

御社の課題や悩みに寄り添い、それらを解決する手助けをさせていただきます。そして、時代に即した情報を見極めながら、御社の収益力を高めるべく、最適なご提案をさせていただきます。

ぜひとも、こちらの「お問い合わせ」まで本音をお聞かせください。

執筆者:池谷 陽平、監修:中小企業診断士 居戸 和由貴

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この記事を書いた人

【中小企業診断士】
生命保険会社、人材会社、戦略コンサルタント会社での経験を経て、2021年に中小企業診断士として独立。強みであるマーケティングとテクノロジーを軸に、中小企業の売上拡大を目的として活動

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