補助金を提案すると受注率が上がる?営業側のメリットと具体的な制度を解説

補助金とは、企業の事業活動の支援を目的として、国や地方自治体が必要な費用の一部を補助する制度です。補助金には数々のメリットがあるため、メーカーや商社、システム会社などの営業活動に取り入れることで受注率アップを期待できます。

この記事では、顧客に補助金を提案するメリットを3つ解説します。また、中小企業の顧客におすすめできる3つの補助金も具体的に紹介。補助金を顧客に勧める際の注意点もまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

補助金とは、国や自治体の政策目標の達成や地方創生などの目的を達成するために、事業者の取り組みをサポートする制度です。

事業者側は、公募期間中に所定の書類を事務局等に申請し採択を受けることで、事業計画に基づいた費用の一部を補助金として受け取ることができます。

こうした補助金を営業先で顧客に提案することには、以下のメリットが存在します。

  • 顧客の費用負担を軽減して販売を促進できる
  • 競合他社との営業競争で優位にたてる
  • 顧客との信頼関係を強化できる

それぞれの具体的な内容をみていきましょう。

顧客の費用負担を軽減して販売を促進できる

補助金を顧客に提案することで、商品・サービスの販売促進を期待できます。

なぜなら、補助金の活用によって顧客の予算増加が見込まれるからです。補助金は、「不課税取引」にあたるため、消費税が発生しません。また受け取った補助金は、不正受給や不正利用などの例外を除き返済不要です。

つまり、補助金を利用すれば、企業側は補助金分の自己資金を投じる必要がなくなり、製品購入の心理的ハードルが下がります。結果的に、顧客の購買意欲を高めて製品・サービスの販売促進を期待できるのです。

参照:国税庁|No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例
商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金<一般型>| 補助金の不正受給等の不正行為に対する処分について

競合他社との営業競争で優位にたてる

営業活動に補助金を活用することで、競合他社との営業競争で優位にたてるようになります。

コストを抑制したい事業者にとって補助金はメリットのある制度ですが、全ての事業者が補助金を認知しているとは限りません。

そのため、営業担当者は補助金のメリットを顧客に説明することで、商品・サービス以外にも顧客に対して価値のある提案ができます。

「業績の悪化等により新規事業や事業再建に踏み込めない」という顧客に対しても、具体的な解決策を提案できるため、営業競争で優位にたてるのです。

顧客との信頼関係を強化できる

顧客企業が補助金を活用したいと考えても、自社に十分なリソースがない場合、「補助金を申請したいけど、人手や時間が足りない」「採択されるような計画書を作成する自信がない」と、補助金の申請を見送ってしまうかもしれません。

そこで、営業担当者が補助金の提案だけでなく、申請や申請後のサポートなどを提案することで、顧客の抱えている課題を解決に導き信頼関係を強化できます。

補助金は数々のメリットがある制度ですが、申請資料の作成に時間がかかるといった注意点も存在します。そこで、営業担当者が顧客の課題や悩みにアプローチして、顧客の信頼を獲得できれば、その後も商談の機会を継続的に持てるはずです。新たなビジネスチャンスも創出できるでしょう。

営業活動に補助金を活用する場合、どのような補助金を顧客におすすめできるのでしょうか。ここでは、中小企業が申請可能な3つの補助金を紹介します。

  • 小規模事業者持続化補助金
  • ものづくり補助金
  • 事業再構築補助金

制度の概要、申請要件、補助額等を確認しましょう。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が販路拡大や生産性向上のために必要な費用の一部を国が補助する制度です。

働き方改革やインボイス制度導入などの新たな制度変更に対応できるよう、小規模事業者の持続的な事業発展を支援することが主な目的です。

対象は、従業員規模が小規模な法人、個人事業主、特定非営利活動法人となっており、該当する顧客には積極的に提案したい補助金です。

<小規模事業者持続化補助金の対象>

事業常時使用(業務に従事)する従業員の数
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)5人以下
宿泊業・娯楽業20人以下
製造業・その他20人以下

小規模事業者持続化補助金には5つの申請枠があり、申請枠によって補助率と補助上限額が異なります。

申請枠補助上限額補助率
通常枠50万円2/3
卒業枠200万円2/3
後継者支援枠
創業枠
賃金引上げ枠2/3 ※赤字事業者は3/4

参照:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金事務局|小規模事業者持続化補助金<一般型>第16回公募 公募要領 4.補助率、補助上限額等

さらに、インボイス特例の要件を満たす場合は、上記の上限額に50万円が上乗せされるため、通常枠で最大100万円、特別枠で最大250万円の補助を受けられる可能性があります。

なお、こちらの記事では小規模事業者持続化補助金の創業枠についての詳しい説明やメリットを解説しています。本記事とあわせてご覧ください。

小規模事業者持続化補助金の創業枠が経営に役立つ理由を解説

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、正式名称「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」を省略したものです。中小企業や小規模事業者の革新的なサービスの開発、試作品開発、生産プロセスの改善を後押しするために運用されています。

事業者が、ものづくり補助金を利用することで、設備投資等にかかった費用の一部に補助を受けられる可能性があります。

ものづくり補助金の対象は、すでに創業している中小企業です。個人事業主は開業届を提出していること、法人は設立登記を済ませている必要があります。また、賃金引上げの誓約書を用意することも条件の1つとなります。

参照:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領(18次締切分)1.1版

ものづくり補助金の補助率や補助上限額は、申請枠や従業員数によって変化します。例えば、省力化枠(オーダーメイド枠)の場合、従業員5人以下なら最大750万円(大幅賃上げで1,000万円)、100人以上なら最大8,000万円(大幅賃上げで1億円)が補助上限額となります。補助率は、中小企業が原則1/2、小規模事業者や再生事業者は原則2/3です。

引用:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領(18次締切分)1.1版|1-2-1補助対象事業

ものづくり補助金は、革新的サービスや生産性向上のための設備投資を検討する企業が、手厚い支援を受けられる制度といえます。営業側の企業は、そういった顧客に積極的に提案しましょう。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、中小企業の事業転換や新しい事業への挑戦に必要な費用の一部を国が支援する制度です。実施主体は経済産業省で、日本経済の構造転換を後押しすることを主な目的としています。

事業再構築補助金の対象者は、中小企業と「中堅企業」です。中小企業の範囲は中小企業基本法と同様で、業種ごとに従業員数や資本金の要件が決められています。中堅企業とは、中小企業の範囲に入らない会社のうち、資本金10億円未満の会社を指します。

中小企業の範囲は下表の通りです。

製造業その他資本金3億円以下の会社又は従業員数300人以下の会社及び個人
卸売業資本金1億円以下の会社又は従業員数100人以下の会社及び個人
小売業資本金5千万円以下の会社又は従業員数50人以下の会社及び個人
サービス業資本金5千万円以下の会社又は従業員数100人以下の会社及び個人

参照:経済産業省|事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業)12.0版 3.中小企業の範囲、中堅企業の範囲

事業再構築補助金の補助率や補助上限額は、申請枠や企業形態、従業員規模によって変化します。例えば、成長分野進出枠(通常類型)の場合、従業員20人以下なら最大1,500万円(大規模な賃上げで2,000万円)が補助上限額となり、中小企業は補助率1/2(大規模な賃上げで2/3)、中堅企業は補助率1/3(大規模な賃上げで1/2)となります。

引用:経済産業省|事業再構築補助金 第12回公募の概要 1.1版 3-2.成長分野進出枠(通常類型)

事業再構築補助金は予算規模が大きいことでも知られる補助金です。令和2年度3次補正予算では1兆1,485億円、令和3年度補正及び令和4年度予備費では、計7,123億円もの予算が計上されるなど、毎年大規模な予算が組まれています。

参照:中小企業庁|中小企業等事業再構築促進事業について 1.中小企業等事業再構築促進事業の概要

したがって、事業転換や新分野進出、事業再編など、事業を再構築しようとする中小企業に対しては、事業再構築補助金を積極的に提案してみてはいかがでしょうか。

顧客に補助金を提案する際は、顧客の利益を尊重して良好な関係を築きましょう。その他に注意したいポイントがこちらです。

  • 顧客が補助金を適切に活用できるよう、正しい情報を伝える
  • 補助金のメリット・デメリットを説明する
  • 申請から活用までフォローできる体制を整える
  • 常に顧客の立場からサポートする

くり返しになりますが、顧客が補助金を受け取るまでには一定の期間がかかるほか、書類の申請等の手続きに人手や時間もかかります。申請が不採択になるリスクもあります。

こうしたデメリットを隠さずに伝えることで、「本当に私たちのことを考えてくれている」と顧客に感じてもらえます。

さらに、補助金の正しい知識を持つことも重要です。例えば、2024年度の第16回小規模事業者持続化補助金(一般型)では、従来と異なり「電子申請」のみ受け付けています。そのため、事務局へ持ち込む方法や郵送で申請書を送る方法は不可となります。

また、ものづくり補助金は社会状況の変化等に対応するため年々変化しています。近年では省力化(オーダーメイド)枠や製品・サービス高付加価値枠が追加され、申請の枠が広がりました。

参照:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金事務局|小規模事業者持続化補助金<一般型>第16回公募 公募要領
全国中小企業団体中央会|ものづくり補助金総合サイト 公募要領

こうした制度の変更により、新たに補助金の対象となる顧客が出てくるかもしれません。営業担当者がこうした変化に対応することで、より顧客からの信頼を得て受注率向上につなげられます。

従来の営業活動に補助金を取り入れることで、費用負担の軽減による購買意欲の向上や価値ある提案が可能となります。

顧客に適切な補助金を提案して適切なサポートを行えば、これまでの受注率を大幅に高められるはずです。

しかし、受注率を高めるまでには、補助金の知識が必須となるほか、顧客に応じたサポートが必要になります。営業担当者には大きな負担がかかるでしょう。ここまでお読みいただいて、補助金の活用に不安を感じる営業部長やセールスマネージャーも多いのではないでしょうか。

「補助金や助成金を顧客に提案したいが、正しい情報を届けられるか不安がある」「補助金を活用したいが、リソースが足りない」といったお悩みのある方は、ぜひこの機会にハッシュタグまでご相談ください。

ハッシュタグは、マーケティングやテクノロジー分野で培ってきた実績や実践経験を生かし、中小企業の皆さまの中長期的な売上拡大を支援いたします。補助金の申請支援におきましても、単に申請業務をサポートするだけでなく、お客さまの課題や悩みを二人三脚で解決できるよう親身なコミュニケーションで支援させていただきます。

無料でのご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

執筆者:千葉 拓未

監修者:Harmonic Society株式会社 代表取締役兼CEO 師田 賢人、中小企業診断士 居戸 和由貴

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この記事を書いた人

【中小企業診断士】
生命保険会社、人材会社、戦略コンサルタント会社での経験を経て、2021年に中小企業診断士として独立。強みであるマーケティングとテクノロジーを軸に、中小企業の売上拡大を目的として活動

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