ものづくり補助金の活用で5軸加工が切り拓く新時代へ

ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発等による生産性向上に役立つ設備投資等を支援するための補助金です。この補助金は対象とする産業を限定しておらず、むしろ応募申請する事業分野に応じて「特定ものづくり基盤技術の高度化」や「サービス事業者の生産性向上」に関する基準を求めています。

もっとも、ものづくり補助金の活用例には製造業が多く、製造業と親和性の高い補助金であることは確かでしょう。革新的な技術を備えた設備に投資することで、生産性向上を図るというシンプルな相性があります。

かつて日本は「ものづくり大国」と呼ばれ、日本の産業や経済において製造業が重要な位置を占めていることを表していました。

その中に金属加工業があり、あらゆる製品・機械にとって必要不可欠でした。たくさんの種類の金属加工技術がありますが、切削加工に分類される5軸加工は、複雑な形状の製品を効率よく高品質に生産できる画期的な進歩で、今なお最先端で活躍しています。本記事では5軸加工に注目し、ものづくり大国の将来を覗いてみましょう。

目次

5軸加工の基本的な原理と特長

5軸加工の基本原理

1970年代前後は、3軸加工が一般的でした。それは、X、Y、Zという3つの直交軸に沿った動きを基本とするものでした。しかし、5軸加工では、この3軸の動きに加えて、2つの回転軸(多くの場合、A軸とB軸として表される)が追加されます。これにより、ワークピースを同時に5つの自由度で動かすことができるようになります。

具体的には、3軸の線形移動に加えて、ワークピースやツールが特定の軸周りに回転することで、さまざまな角度や方向からの加工が可能となります。これにより、一度ワークピースをセットすれば、複数の面を加工することができるようになったのです。

5軸制御のマシニングセンタ

5軸加工による生産性向上や高精度加工の可能性

5軸加工の導入により、次のようなメリットが得られました。

生産性の向上

1台のマシンで複数の工程の処理が可能となり、工作機械を特定の加工作業に適切に設定する「セットアップ」時間の削減や加工時間の短縮が実現しました。特に複雑な部品の場合に、5軸加工は劇的な時間短縮を達成しました。

高精度加工

5軸の動きにより、工具の接触角を最適に保ちながらの加工が可能となったため、高品質な仕上がりや精度の向上が見られました。

柔軟性の向上

複雑な形状や斜面、深い穴などの加工が一つの「セットアップ」で可能となり、生産の柔軟性が格段にアップしました。

工具の寿命の延長

工具の最適な接触角での加工が可能になったことで、工具の摩耗が均一になり、寿命の延長につながりました。

5軸加工技術の沿革

初期段階(1950~1970年代初頭)

この時代、ほとんどの機械加工は、2軸や3軸のフレーズマシンという機械を利用しました。2軸の場合、X軸(前後)とY軸(左右)に沿った移動しかできなかったので、加工物の形状や角度によっては、多数の工程や、加工物等を適切に固定する治具の変更が繰り返し必要でした。

3軸加工の登場によって、Z軸(上下)方向の動きが追加され、より複雑な形状の加工が可能となりましたが、依然として限定的な動きしかできませんでした。

5軸加工の初期導入 (1970年代~1980年代)

の時期に、5軸同時制御のCNCマシンが初めて導入されるようになりました。CNCマシンは、工作物を精密に切削、加工、形成するために使用されます。コンピュータープログラムによって制御されるため、高度な精度と繰り返し性を持って作業が行われることが特徴です。この技術は、特に航空宇宙産業や自動車産業での複雑な形状の部品加工において非常に有益でした。

5軸加工は、A軸とC軸(回転軸)を持ち、加工物をほぼ任意の角度で持ち上げて加工することができるため、一度に多くの面を加工することが可能となりました。

技術の成熟 (1990年代~2000年代)

5軸加工の機械とソフトウェアの技術は急速に進化しました。CAD/CAMソフトウェアの発展により、高度な部品設計と5軸加工プログラミングが容易になりました。

また、複雑な形状や高精度な部品の需要の増加に伴い、5軸加工技術はさらに一般的となり、多くの産業分野での採用が進みました。

現代 (2010年代~現在)

現在、5軸加工技術は金属加工業界において主要な技術の一つとして位置づけられています。この技術により製品のリードタイムが短縮され、生産効率が向上し、複雑な部品の製造もより簡単かつ高品質に行えるようになりました。

以上のように、5軸加工技術は金属加工の歴史において重要な進化を遂げてきました。多くの産業分野での要求に応えるための技術革新として、この技術は引き続き発展していくでしょう。

インダストリー4.0と金属加工・5軸加工

「インダストリー4.0」は、第四次産業革命とも呼ばれ、製造業におけるデジタル技術の革命的な進歩を指しています。例えば、この変革は、金属加工、5軸加工、CNC(Computer Numerical Control:コンピュータ数値制御)技術などの分野にも現在進行形で影響を与えており、順次、次に掲げるような変革が進みつつあると考えられます。。

  1. リアルタイムデータ:インダストリー4.0の技術で、リアルタイムのデータ収集・分析が可能になり、最適化または異常検知が容易になる。
  2. 適応型生産:5軸加工やCNC機械が、迅速に設計変更や生産計画に対応できるようになり、小ロットの生産やマスタマイズが容易になる。
  3. 自動化と統合::工程の連携と自動化により、生産効率と稼働率が向上する。
  4. 遠隔監視::工場の遠隔地からの監視・操作が可能で、生産の効率性や品質を向上できる。
  5. 予防的保守:機械の異常や故障を事前に予測し、ダウンタイムを削減する。

総じて、インダストリー4.0は、金属加工、5軸加工、CNC技術の分野において、効率性、柔軟性、品質向上をもたらし、生産の最適化とイノベーションを促進する要因となっているのです。

金属加工・5軸加工の現状と将来性

金属加工の市場規模の推移見込み

金属加工業界は伝統的に製造業の中核を成す分野であり、航空、自動車、建設機械、エレクトロニクスなどの多岐にわたる産業に対して部品や製品を供給しています。そのため、各産業の成長や技術の進展によって、市場規模や動向が影響を受けるのが一般的です。

2021年時点での具体的な金属加工業界の全体的な市場規模に関する数字は、地域や機械分野、製品によって異なります。しかし、アジア太平洋地域は、特に中国やインドの製造業の拡大に伴い、金属加工の需要が増加しています。グローバルな観点から見ると、金属加工市場は、新しい技術の採用、再生可能エネルギーへのシフト、電動車の普及、航空産業の復活などによって、今後も持続的な成長が期待されます。

ただし、世界各国が関心を寄せる経済安全保障、イデオロギー対立等の政治的不安定などの外部要因にも気を配り、事業への影響を把握しておく必要があります。

5軸加工の将来性

5軸加工は、金属加工の中でも先進的な技術の一つと見なされています。従来の3軸や4軸の機械よりも、複雑な形状や精密な部品の製造が可能で、生産性の向上や短縮された製造時間が実現できます。

航空宇宙、医療、自動車産業など、高度な精度と複雑な形状を必要とする部品の製造において、5軸加工はますます重要になってきています。5軸加工は、部品を機械の上で何度もセットアップしなおす必要がないため、生産性が向上します。

また、5軸加工機は、AIやIoTなどの先端技術と組み合わせることで、より効率的で高品質な製造が可能になります。

結論として、金属加工の市場は引き続き成長する見込みであり、特に5軸加工の技術は多くの産業においてその価値が認識されており、その導入と利用が拡大すると予測されます。

参入・拡大チャンスもある5軸加工

5軸加工ならではの代表的な製品

  • 航空エンジンのタービンブレード:複雑な形状と精度が求められます。
  • 医療用プロステーション:個人の体型に合わせたカスタマイズが可能。
  • 自動車のプロトタイプ部品: 高い設計自由度があり、迅速な試作が可能。
  • 高級時計の部品: 高い精密度と複雑なデザインが求められる部分の製造。

5軸加工を活かした新分野

  • 芸術や建築現場での応用
  • スポーツ用品のカスタマイズ
  • 宝石・時計産業にて、高精度な部品や装飾品の製作
  • 高度なタービンブレードやその他の関連部品の製造

DMG森精機が示す5軸加工の将来性

グルーバル市場でも活躍する世界最大規模の工作機械メーカーのDMG森精機株式会社の記事執筆時の直近決算発表場での、5軸加工の今後を巡る次のような記事が出ています。

〝DMG森精機は2023年8月3日、2023年度上半期(2023年1~6月)決算を発表した(図1)。連結売上高は前年同期比14.4%増の2495億円。営業利益は同27.5%増の226億円で増収増益だった。一方で、連結受注は同7.9%減の2758億円。日本や中国で需要が落ち込んだ。ただし、欧州市場は「想定以上」(同社)に好調だったこともあり、2023年度通期の受注予想を期初計画の5000億円から5200億円に上方修正している。

テスラの工場に大型5軸加工機を納入

産業別では、航空・宇宙や医療、エネルギー・発電、電気自動車(EV)関連の需要が堅調だ(図2)。特にEV関連の需要について、同社代表取締役社長の森雅彦氏は決算会見の中で、米Tesla(テスラ)の米国の工場に大型の5軸加工機を納入したと明らかにした。大型部品を一体成形する鋳造方法「ギガキャスト」で造った部品に穴を開けたり溝を削ったりする加工は、「全て当社の加工機が担っている」(同氏)という。〝

(引用:日経XTECH「DMG森がEV関連需要で好調、テスラ「ギガキャスト」の後加工担う」2023.8.8)

これは一企業の動向のレベルでは収まらず、業界を牽引する工作機械メーカーであることから、同社の投資判断の背景である将来見通しから予測できるトレンドは裾野にまで広く影響していくものと考えられます。工作機械業界は、メーカーを主にして各企業の設備投資需要や景気に左右されやすいことから、景気の先行指標とも呼ばれているのです。通常、この時期にDMG森精機社が積極投資に踏み切る見通しを示したことは、金属加工業界の需要も堅調に伸びると予測できる1つの要素であると言えます。

したがって、EV(電気自動車)・自動車・二輪、精密・半導体、金型、航空・宇宙、医療、エネルギー・発電などの分野では高精度の金属加工製品の旺盛な需要が継続すると考えられることから、5軸加工機への設備投資を行う価値が大きいと見立てるのが妥当でしょう。

5軸マシニングセンタの価格

新品

同時5軸加工が可能な新品のマシニングセンタには、一般的に高精度な加工能力が求められるため、その技術と機能が反映され、たいへん高額となります。

グレード価格帯適した用途等
エントリーレベル約2,800万円〜4,200万円基本的な5軸加工が可能なモデルで、一般的な用途に適しています。
ミッドレンジ約4,200万円〜8,400万円より高度な機能と精度を備えたモデルで、多岐にわたる用途に対応します。
ハイエンド約8,400万円〜1億4,000万円以上極めて高精度な加工が可能で、特殊な用途や高い生産性を求める場合に適しています。

中古品

グレード価格帯状態の良いものに適した用途等
エントリーレベル約2,800万円〜4,200万円基本的な5軸加工が可能なモデルで、一般的な用途に適しています。
ミッドレンジ約2,100万円〜8,880万円より高度な機能と精度を備えたモデルで、多岐にわたる用途に対応します。
ハイエンド約4,200万円〜9,800万円極めて高精度な加工が可能で、特殊な用途や高い生産性を求める場合に適しています。

中古品の場合、価格は新品の約50%〜70%になるのが一般的ですが、機械の状態、年式、使用時間、メンテナンスの状況などによって大きく変動します。どの程度の負荷がかかる加工をどれほどの期間行ってきたのかなど、使用状況の入念な確認が必要があり、中古業者に十分にヒアリングしなければなりません。

ものづくり補助金を活用した5軸加工への挑戦

これまでの5軸加工関連補助事業採択実績

採択結果が発表された直近2回の公募では次表の通り、合わせて8者が5軸加工関連の補助事業で採択を獲得し、5軸加工を活用した金属加工製品の制作販売事業を始め、または再挑戦する運びとなりました。

5軸加工機の活用が、ものづくり補助金の対象となっていることが分かります。

採択都道府県商号又は名称事業計画名
13次東京都アトリエOKJ小型5軸加工機を活用して、装飾性の高いカスタムナイフの制作
13次三重県株式会社T’sディスク状材料への切削加工が可能な5軸加工機導入による工程改善
13次愛媛県有限会社オガタ技研5軸複合加工機導⼊による真空配管部品の高精度化・生産性向上の 取組み
13次宮崎県株式会社HDS5軸対応マシニングセンタ導入による協働ロボット部品等量産化への挑戦
14次茨城県株式会社イソメディカルシステムズ5軸加工機導入による、より精細な医療機器の製造体制の実現
14次東京都株式会社城南切削加工の5軸化に向けたCAD/CAMシステムの導入
14次石川県有限会社ユーエス・アイテック5軸加工機導入による加工精度および生産性の向上
14次長野県株式会社シミズ5軸加工機導入による新規受注獲得および生産性向上

(出典:ものづくり補助金総合サイト「採択結果」)

ものづくり補助金の活用範囲

ここでは一旦、ものづくり補助金の枠組みで、補助事業費を全額5軸マシニングセンターの調達に活用すると仮定してみましょう。

<通常枠>では、従業員数5人以下の場合は補助率2/3で補助金額上限が750万円ですから、補助事業費は1,125万円となります。従業員数6人〜20人の場合は補助率2/3で補助金額上限が1,000万円ですから、補助事業費は1,500万円となります。従業員数21人以上の場合は補助率1/2で補助金額上限が1,250万円ですから、補助事業費は2,500万円となります。

この金額になりますと、補助金の1/2を自己資金の上限として計画していた場合、ものづくり補助金の活用のみでハイスペックな新品5軸マシニングセンタを調達するのは確かに不可能です。しかし、残額を自己資金で賄ってでも優れた最新鋭の5軸マシニングセンタを積極的に調達する事業者もあるかもしれません。

しかし、多くの場合、ものづくり補助金の範囲内で調達しようとすると、需要に応えられそうな機種を中古品の中から厳選して再利用する必要があります。高級な新品が良い製品を生産すると決まっているわけではありません。

需要に応えることこそ製造業の本質

金属の切削加工は、顧客が希望する設計通りの製品を、高精度かつ短納期でお納めすることにこそ基本があります。つまり加工機が大きければよいわけではありません。

確かに、航空機内外のタービンブレードの美しい曲面の加工はとても素晴らしい仕事です。しかし他方で、日本のものづくりの強み、すなわち高度な技術力、品質への高いこだわり、継続的な改善、サプライチェーン内での協力体制や産業クラスター、技術者人材の高い教育水準と専門知識などに裏打ちされた伝統ある現場において、例えば、半導体製造装置用バルブ試作部品(難削材(ハステロイ))の加工を同時5軸加工で制作し、ご自身の事業を成長させていくことにも大きな意義があるでしょう。

メジャーどころでは、NKエンジニアリング株式会社が中古マシニングセンタ販売サイトを運営しています。

このサイトには、たいへん多くの中古機械が掲載されていますが、「商品の仕様・価格等のご質問は、各中古機械販売店にお問い合わせください。」となっています。

また、DMB森精機株式会社のような工作機械メーカーが中古販売サイトを運営していることもあります。DMB森精機株式会社の中古機械販売サイトでは、展示品などを中古として販売するなど、相当に程度良く整備されたものが揃っているため、中古のマシニングセンタとはいえ、安心感が段違いです。もちろん、このサイトに掲載されている製品についても価格等は見積もりを依頼する必要があります。

ただ残念ながら、工作機械業界でもトップランナーである、株式会社マキタ、ファナック株式会社、三菱重工業株式会社、株式会社安川電機、芝浦機械株式会社、株式会社オカムラ、THK株式会社、ブラザー工業株式会社などでは、自社の中古製品を販売するスキームはありません。

そうすると、既述の「中古機械情報百貨店」のように中古機械販売業者が多くの工作機器メーカーの中古品を取り扱っているので、ものづくり補助金も活用しながら、お目当ての工作機械がある場合には安価で取得できるチャンスがあるかもしれません。

5軸加工の将来性

5軸加工は、金属加工の中でも先進的な技術の一つと見なされています。従来の3軸や4軸の機械よりも、複雑な形状や精密な部品の製造が可能で、生産性の向上や短縮された製造時間が実現できます。

航空機の主動部

金属加工業界は、技術の進展と多岐にわたる産業での利用拡大により、今後も健全に成長すると見込まれています。中でも5軸加工は、その高い精度と複雑な製品の製造能力から、将来的に更なる展開が期待されております。各企業が持続可能な技術への投資を強化していくことでしょう。

まとめ

本記事では、金属加工のうち、5軸加工にスポットを当て、優れた点や、今後の可能性についてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。巨大な部品ではなく、私たちの生活に溢れているさまざまな機械そのものや金属部品を必要としています。

そのような意味でビジネスチャンスとなる余地のある領域はまだまだ増加していき、5軸加工がその実力を発揮するチャンスも広がっていくことでしょう。

5軸加工による切削技術を活用した事業アイディアをお持ちの方は、ぜひ、こちらの「お問い合わせ」から「ハッシュタグ」に御社の考えをお聞かせください。どのような事業計画・戦略とすることで成功につながるか、最善の解決策をご提案させていただき、御社の収益力向上に強くコミットする所存です。

執筆者:池谷 陽平、監修:中小企業診断士 居戸 和由貴

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この記事を書いた人

【中小企業診断士】
生命保険会社、人材会社、戦略コンサルタント会社での経験を経て、2021年に中小企業診断士として独立。強みであるマーケティングとテクノロジーを軸に、中小企業の売上拡大を目的として活動

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