中小企業(製造業)が事業再構築補助金を活用して新分野展開をする

新分野展開を狙う中小の製造業者にとって、事業再構築補助金はうってつけの制度です。本記事では、事業再構築補助金を活用して新分野展開をしたい製造業者の経営層に向けて、これまでの公募で新分野展開をして事業再構築補助金に採択された事例3つを紹介します。ぜひ次回公募に向けて、事業再構築補助金に採択されるための準備を始めてみてはいかがでしょうか。

目次

事業再構築補助金 新分野展開では、新たな市場に進出する

事業再構築補助金の新分野展開では、新たな市場に進出する必要があります。そのためには3つの要件を満たす必要があります。

  1. 製品の新規性
  2. 市場の新規性
  3. 売上高10%(※)

※新たな製品等の(又は新たな製造方法等の)売上高が総売上高の10%以上になること。

事業再構築補助金の概要については、以下の記事をご覧ください。

関連記事:事業再構築補助金で経営変革を実現

事業再構築の類型のうち、どれに当てはまるかは下図を参考にしてください。

【事例1】ベンダ工業株式会社:ハイブリッド車向け部品製造

ベンダ工業社は、国内外の大手自動車メーカーに対して、独自技術「ベンダ工法」を活かした内燃機関車のエンジン始動用部品「リングギア」の設計・製造・販売をしています。ベンダ工法を確立した当初は、国内の自動車メーカー1社だった取引先も、現在では世界の自動車メーカーを中心に、トラック、建機、農機など、100社相当に拡大。リングギアを含むリング製品全体で年間2000万個以上を生産し、世界一のシェアを占めるまでになりました。

しかし「品質は命なり」を信条に質の高い部品を製造し続けてきたベンダ工業社ですが、自動車市場はエンジン車から電動自動車へと移行が進んでおり、リングギアの需要縮小は目に見えています。そこで同社はハイブリッド車向けの電動化技術部品を製造することを決め、独自の材料加工技術を活用することで他社製と比べて安定した加工精度と高品質な製品を、短いリードタイムと高い歩留まり率で供給します。

事業再構築補助金を活用して、量産体制構築のための設備投資を行い、補助事業終了後5年目で新分野の売上比率20.5%を計画しています。「世界中の鉄を曲げてやる」という創業当初の思いを胸に、ベンダ工業者は新分野展開をして生まれ変わろうとしています。

【事例2】株式会社モリタアンドカンパニー:航空・宇宙エンジン部品事業

モリタアンドカンパニー社は、国内外の自動車部品・鉄道車両メーカー等より生産設備を個別に受注・設計・製作するプラント事業を行っています。たった一台のばね製造機から始まったモリタアンドカンパニーは、時代やテクノロジーの進化に合わせて、「世界に1つだけ」の価値を提供し続けてきました。海外進出はいまや世界約30カ国に広がり、高い技術力や品質のみならず、納入先の地域性を重視した対応についても高い評価と信頼を受けています。

ところがモリタアンドカンパニー社の事業は、外部環境に売上が依存しやすいことが課題で、売上のポートフォリオを分散化してリスク回避することを課題としていました。そんな中、以前から航空宇宙関連部品の製造に注目し活動を続けてきました。今回コロナ禍で売上が落ち込んだときに、事業再構築補助金の存在を知り航空・宇宙エンジン部品事業へ進出することを決断しました。

具体的には、航空機エンジンとロケットエンジンの燃焼室部品を生産します。材質と構造に高度な技術と設計が要求される部品であるため、同社の加工技術と、プラント事業で培った効率的で安定した品質で生産する技術を活かせます。事業再構築補助金で機械設備取得のための投資を行い、補助事業終了後5年目で新分野の売上比率11.7%を計画しています。

【事例3】茶久染色株式会社:手術用ガーゼRFIDタグの製造

茶久染色社は、100年前より糸の染色を手がけています。愛知県尾張地方の繊維の町、一宮市で大正5年の創業から、一貫して毛合繊糸染色加工業を営み、その後の社業の繁栄に伴い昭和31年に株式会社に組織を替え、現在に至っています。

特に染めにくい素材への染色技術に高い評価を得ており、抗菌消臭、涼感温感、吸水撥水、難燃加工等の機能付与も行っています。国内の繊維業界は、海外生産品であるファストファッションの台頭により厳しい状況が続き、加えてコロナの影響から外出自粛や購買意欲の減退で、アパレル市場全体が縮小しています。

このような状況を受けて、マスクやガーゼ等、医療分野への参入を検討していたところ、手術時のガーゼ遺残事故防止のために使用する電子タグが普及せず、事故が起こり続けていることを知りました。ここに同社の糸を扱う技術力を活かせると考え、手術用ガーゼ向けRFIDタグの製造に進出する決断をしました。事業再構築補助金で加工・量産設備への投資を行い、補助事業終了後5年目で新規事業の売上比率10.8%を計画しています。

参考:事業再構築補助金

まとめ:いかに自社の強みを生かし新分野展開できるか

本記事では、事業再構築補助金を活用して新分野展開を狙う3社の製造業者の事例を紹介しました。3社に共通することは、自社の強みを新分野展開に活かしていることです。そのため新分野展開をする新たな市場を見つけるときにも、まずは自社の競争力の源泉となる強みを冷静に分析することから、始めてみてはいかがでしょうか。その結果、どこにその強みを活かせるかは自ずと決まってくるはずです。

執筆:師田賢人

よかったらシェアお願いします!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

【Harmonic Society株式会社 CEO】
外資系コンサル、Webエンジニア、Webライター、フォトグラファーを経て、2023年にHarmonic Society株式会社を設立。企業の経営の悩みを言葉で解決している。一橋大学商学部卒。

目次