ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発等による生産性向上に役立つ設備投資等を支援するための補助金ですが、近年ではドローン(無人航空機)の存在なしに語ることはできません。革新的機器であり、高付加価値サービスを提供するツールとして、さまざまな産業分野で活躍しており、その範囲や規模に限界は感じられません。
当然のことながら、たくさんドローンを仕入れて、システム制御も完璧だ、というだけでは、エンターテイメント分野であってもルール度外視で空撮業務を行うわけにはいきません。この点、本サイト記事「ドローンのすすめ(操縦士スクール運営編)|ものづくり補助金の活用例」をご参照いただければ幸いです。
本記事では、ドローンを活用した「エンターテイメント」分野の可能性を広く知っていただきたくご紹介します。ドローンを活用して事業参入するならエキサイティングなエンターテイメントに興味を引かれるという事業者様はぜひ参考としていただきたく存じます。
イベント空撮
イベント空撮とは、ドローンを使用して高所から見下ろすようにイベントの様子を撮影する手法です。近年のドローン技術の進化により、人々が一度に見ることができる視点、範囲、アングルが飛躍的に拡大し、観客や関係者がイベントをより深く、より美しく記憶に残すための手段として普及しています。
イベント空撮には大きく分けて、スポーツイベント空撮、フェスティバル空撮、コンサート空撮、結婚式空撮などがあります。
スポーツイベント空撮
マラソンや自転車レース、野球、サッカーなど大規模なスポーツイベントの空撮は、競技の全体像を把握するために非常に有効です。ドローンはプレーヤーの視点だけでなく、会場全体、観客の様子なども捉えることができます。特に大規模なレースイベントでは、レースの先頭から最後まで一貫して撮影することで、観客に現地の雰囲気や緊張感を伝えることができます。
フェスティバル空撮
お祭りやパレードなどのフェスティバルでは、その規模と華やかさを最大限に引き立てることができます。特に花火大会や夜祭りでは、空からの視点で色彩豊かな光景を捉えることで、その場にいる人々だけでなく、後から映像を見る人々ともその興奮を共有することができます。
コンサート空撮
音楽イベントやコンサートでは、ステージのパフォーマンスだけでなく、観客の盛り上がりや会場全体の雰囲気をダイナミックに捉えることができます。アーティストの表情や動き、光と音のショーを多角的に収め、ライブの興奮を高めていくのもイベント空撮部隊の使命です。
結婚式空撮
結婚式やパーティーでは、一生に一度の特別な瞬間を美しく、豪華に記録します。特にアウトドアの結婚式では、会場の風景やゲストの配置、新郎新婦の入場など、全体的な位置や構図を美しく収めることができます。
これらのイベント空撮は、その場にいる参加者や観客だけでなく、後から映像を見る人々にも大きな感動を与えます。そのため、スポーツファン、音楽愛好家、お祭りや花火の愛好家、そしてもちろん新郎新婦やその親族など、さまざまな人が喜ぶことになるでしょう。
ドローンショー
ドローンショーの魅力
ドローンショーとは、何百、何千台もの多数のドローン(無人航空機)を同時に飛行させ、コンピュータによって制御することにより、さまざまなパターンや色彩の光景を空中に描くエンターテイメントを指します。個々のドローンが自律的に飛行し、全体として形状や動き、ライトのパターンを構想通りに構成することによって、空中でのアートパフォーマンスの光景を創り出すのです。
近年、ドローンショーは、テクノロジーと芸術の融合として、また新たなエンターテイメントとして、世界中で急速に人気を博しています。特に大規模イベントやフェスティバル、祝賀会などでのパフォーマンスとして頻繁に利用されており、その壮大なスケールと技術的な進歩が注目を集めています。
その1つとして記憶に新しいものに、2021年7月に開催された東京オリンピックの開会式でのドローンショーがあります。これは、数千台のドローンが東京の夜空を彩り地球を形成するという、前代未聞の規模と内容で実施されました。その壮麗な光景は世界中から絶賛され、その一方で技術進歩の象徴ともなりました。これがきっかけとなり、ドローンショーへの注目度が一気に高まった可能性もあります。
また、東京ディズニーリゾートでは、40周年を記念し、全国数カ所の花火大会でスペシャルドローンショーを実施する予定とのことでした。約700機のドローンが一斉に夜空へ飛び立ち、ディズニーソングに合わせ、ディズニーキャラクターを、まるで輝く夜空の星のように大きく描かれます。
本記事執筆時点では、7月22日の静岡市「安倍川花火大会」が終了しており、7月30日の北海道小樽市で開催される「おたる潮まつり」、または宮城県石巻市の「石巻川開きまつり」で素晴らしいドローンショーを堪能することができるでしょう。今後もさまざまなスポットで披露していくとのことです。
・Tokyo 2020
「東京2020オリンピック 夜空を彩ったドローンたち」
・東京ディズニーリゾート
「【公式】東京ディズニーリゾート40周年スペシャルドローンショー…」
ドローンショーのビジネスモデル
ドローンショーは、その魅力的なパフォーマンスが提供するエンターテイメント価値とともに、ビジネスとしても成り立っています。一般的なビジネスモデルとしては、イベントの主催者や企業から依頼を受け、そのイベントのために特別に設計されたショーを提供する形が多いです。これはつまり、ドローンショーを製作・運営する企業は、依頼主のニーズに応じたオリジナルのショーを制作し、そのパフォーマンスの提供を通じて収益を得ているということですから、いつも同じ演目をこなすわけではなく、新たなショーを行うたびに芸術的にも技術的にも挑戦を続けることとなります。
さらに、目を引きがちなドローンの機体だけではなく、関連技術開発、プログラミング、運用管理など、ドローンショーに関連する各種サービスを提供する企業も存在します。これらの企業は、自社の技術力を活用してドローンショーの品質を高め、ショーをより魅力的に、また安全に運営することで市場から高い評価を得ており、今後の事業的成功が期待されます。
今後のドローンショーの経済的成功については、さまざまな要素が影響を与えると予想されますが、第1に挙げられるのはテクノロジーの進化です。ドローンやAIの技術が進歩すればするほど、ショーはより大規模で複雑なものになり、視覚的にも魅力的なパフォーマンスを提供できるようになるでしょう。このような進化は、ショーの制作コストを上げる可能性があります。
また、大規模イベントへの需要が増加するかどうかも大きな影響を与える要素です。オリンピックやワールドカップなどの大イベントが頻繁に開催されるようになれば、それぞれのイベントでドローンショーが開催される機会が増え、市場はさらに拡大すると予想されます。
以上の要素がうまく整うならば、ドローンショーの市場はさらに拡大し、経済的な成功を収める可能性が高まります。その一方で、安全性の確保や各国のドローン飛行に関する法規制などの課題も存在します。これらの課題を解決しながら、テクノロジーと芸術の融合であるドローンショーが、未来のエンターテイメントとして更なる発展を遂げることが期待されます。
ドローンショーの市場規模予測
米国の市場調査企業アライドマーケットリサーチ社の分析によると、ドローンライトショーの世界市場規模は、2021年に13億ドルで、2031年には22億ドルに達すると見込まれており、その年平均成長率は5.7%と予測されています。ライトショーは環境に配慮した花火の代替品として普及しており、音楽フェスティバルなどのイベントでも使用されます。また、ソーシャルメディアを通じてショーの広告や共有が進み、新たな観客獲得に貢献しています。一方で、高価な技術やソフトウェアが必要なため、一部の消費者には高い参入障壁が存在します。発展途上国では、新たなドローンメーカーの出現やイベントでの新技術の採用により、ドローンの利用が増えています。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、製品の供給や価格に問題が生じているとも指摘されています。
ドローンライトショー市場は、タイプ(ドローンフォーメーション、アニメーションショー、屋内ショー、打ち上げ花火)、用途(観光アトラクション、公共/企業/スポーツイベント、音楽コンサート等)、地域(北米、欧州、アジア太平洋、LAMEA(ラテンアメリカ、中東、アフリカ諸国))に分類されます。
最も一般的なタイプはドローンフォーメーションで、操作が容易で経済的です。しかし、アニメーションドローンライトショーの方が成長すると予測されています。音楽コンサートは最も人気のある用途であり、また観光アトラクションや各種イベントでも活用されています。地域別では、欧州が最大のシェアを占め、次いで北米が大きな地域ですが、成長率の面ではアジア太平洋地域が最も高いと予測されています。ドローンショー市場のこれからの成長は多くの利害関係者の注目するところです。
(出典:Allied Market Research ”Drone Lightshow Market Research, 2031”)
ドローンショーへのドローン活用はものづくり補助金の対象
ドローン機体本体、搭載機器、また各種システムは高額な設備投資となりますが、経済産業省が公表している令和5年度ドローン関連予算では、「開発等関連予算」「導入・実証等関連予算」いずれの筆頭にも、ものづくり補助金による支援が明記されています。そして、ものづくり補助金のドローン関連活用イメージに「⽣産性向上に資する⾰新的なドローン製品やサービス開発のために必要な設備の導⼊」が挙げられています。
さらに、以下のように12次締切分と13次締切分のうちドローンを活用した補助事業5件のうち3件がドローンショーに関連する事業が採択されました。
採択 | 都道府県 | 商号又は名称 | 事業計画名 |
12次 | 沖縄県 | ドローンフュージョン 株式会社 | ドローンショーや測量・点検などの最先端ドローン活用サービスの展開 |
13次 | 茨城県 | 株式会社測研茨城 | ドローンを活用した災害時のICT施工技術の整備と民間事業における技術サービス向上の確立 |
13次 | 東京都 | 株式会社 レイコミュニケーション | トイドローンの開発による事業拡大 |
13次 | 石川県 | 株式会社ドローンショー | ドローンショー用ドローンの改良 |
13次 | 滋賀県 | スカイオーシャンキャピタルパートナーズ合同会社 | 3次元計測技法を活かしたドローンライトショー事業への参入 |
(出典:ものづくり補助金総合サイト「採択結果」)
このうち、石川県の株式会社ドローンショーは、ものづくり補助金以前からドローンショーを多数開催してきました。また、ドローンショー用のドローン機体の研究開発するなど、順調な実績を挙げてきています。2023年6月1日からは社名を「株式会社ドローンショー・ジャパン」と変更し、「海外展開を見据えた第2創業フェーズへ」移行していくと見られ、期待のかかるところです。
・【公式】ドローンショー・ジャパン – DRONE SHOW, Inc.
「5Gドローンショー@金沢城公園」
ドローンレース
ドローンレースとは、無人航空機であるドローンを使って競技者同士が高度な操縦技術と速さを競う、新しいタイプのモータースポーツです。遠隔操作するドローンの機体は、特別に設計されたコースを高速で飛行し、早くゴールすることを目指します。
FPVシステムが実現する迫力と圧倒的臨場感
ドローンレースの最大の魅力は、その刺激的な視覚体験と、全く新しい形の競技としての独特の興奮にあります。多くのレースでは、パイロット(操縦者)はFPV(First Person View:一人称)ゴーグルを使って、ドローンからの映像をリアルタイムで視覚的に体験します。こうして、パイロットはまるで自分自身が飛行しているかのような感覚を得ることができ、これがドローンレースの最も革新的で魅力的な部分です。また、高度な操縦技術と戦略、スピード感を求められるため、観客に対しても非常にエキサイティングな視覚体験を提供します。
ドローンレースで使用されるドローンは、一般的なレクリエーション用ドローンとは異なり、速度、機動性、耐久性に優れたものが求められます。レース用ドローンは通常、軽量でありながら強度が高く、高出力モーターと専用のプロペラによって非常に高速な飛行が可能aです。また、FPVカメラとビデオ送信機を搭載しており、リアルタイムで高品質な映像をパイロットのゴーグルに送信できます。
ドローンレースへの参入コスト
新しくドローンレースに参入するには、まず自分自身のドローンと、それを操作するためのリモートコントローラー、そしてFPVゴーグルが必要です。これらの装備はある程度の初期投資を必要としますが、このスポーツの人気が高まるにつれて、多くの製造業者が参入し、各種の価格帯で製品を提供しているため、初期投資に必要な費用が下がる可能性は十分にあります。また、適切な訓練と安全な練習場所が必要で、飛行の基本的な知識とスキルを身につけ、ドローンの操作に慣れることが重要です。
ドローンレースのビジネスモデル
ドローンレースは、エンターテイメント業界と技術業界とが相互に必要とし非常に強い相乗効果が発生する領域に位置しており、さまざまなビジネスモデルで成立しています。この点は、既述のドローンショーのビジネスモデルと非常に類似しています。スポンサーシップや広告はもちろん、放送権や観客チケット、さらには、この新たな分野で企画立案され、ファン層へ強く訴求する多様な商品やサービス、例えばドローンレースファンの方々に提供する、ユニフォーム、機体を模したアイテムなどのグッズ販売からの収入も重要な収益源となっています。また、レース用ドローンと関連製品の販売も成長市場を形成しており、この市場は製造業者だけでなく、ディーラーや小売業者にとっても大きな機会となり得ます。
ヨーロッパを中心としてDCL (Drone Champions League) が大きな人気を博しており、実に108カ国に放映され、ファン人口は1億人を超えるとも言われています。
DCLにも日本チームが参戦していますが、国内でも、日本のドローンレースを引っ張る存在であるJDRA (Japan Drone Racing Association) 、「Drone Impact Challenge実行委員会」、JDL (Japan Drone League) (“SUPER DRONE CHAMPIONSHIP” を不定期に開催) ががあり、今後の成長が望まれるところです。
まとめ
今後、本記事が取り上げたイベント空撮、ドローンショーおよびドローンレースは、さらなる技術的進歩と共に進化し続けるでしょう。最近技術発展の潜在性とエンターテイメントとしての魅力を勘案すると、これらの分野の未来は、楽しみに待つに値するものと言えるでしょう。
中小企業や小規模事業者が、ドローンのような革新的技術を持つ新たな商品や新サービスの開発事業を行う場合、ものづくり補助金の活用を検討できます。
非常に頑強で揺るぎない攻めの姿勢をお持ちの事業者様は、新たな事業として、ドローンによるイベント空撮、ドローンを活用したドローンショー、あるいは技術がぶつかり合うドローンレースに対して、血が滾るような興味・関心を持たれ、事業化へのロードマップをご検討のことでしょう。
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執筆者:池谷 陽平、監修:中小企業診断士 居戸 和由貴