中小企業は「テレワーク」実施をどう捉えるべきか

大企業と比べると、中小企業ではテレワーク実施が広がりません。本文で述べるように、テレワーク実施のメリットは大きく、全社的にではなく部分的に導入することでも十分な効果を期待できます。本記事を読むことで、テレワークの実施効果への認識が改まりその重要性を正しく捉えて、次のアクションに踏み出すことができるでしょう。

目次

中小企業はテレワークを「小さく」始めてみるべき

冒頭で述べたように、中小企業ではテレワーク実施がまだ十分に進んでいないようです。下図は、企業のテレワーク実施率を従業員規模別に示しています。これによると、従業員数が少ないほどテレワーク実施率が低いことがわかります。従業員数50人以下の企業では、約7割がテレワークを実施していないと回答しています。

出典:中小企業のテレワーク実施状況 に関する調査(東京商工会議所)

テレワーク未実施の企業がテレワークを実施できない理由は何でしょうか? 次の図を見ると、「テレワーク可能な業務がない(64.7%)」との回答が突出しています。

出典:中小企業のテレワーク実施状況 に関する調査(東京商工会議所)

さて、テレワーク可能な業務がないというのは本当でしょうか。確かに、大型の機械を用いる製造業の作業員や、対面でのサービス提供が必須となる接客業のスタッフなどは、テレワークに移行することは難しいでしょう。ですが、テレワークは全社的に実施するのではなく部分的に導入するだけでもいいのです。

例えば、経理や人事などは紙の書類を扱う業務が多くテレワークは難しいと考えるかもしれません。ところが、クラウドのSaaSツールなどを導入してペーパーレスな業務フローに移行すれば、テレワークで業務を行うことは十分に可能です。自社の業務は本当にテレワークで実現不可なのか、先入観にとらわれずに考えてみる必要がありそうです。

中小企業がテレワークを導入するべきメリット

ここまでの記事を読んで、時間と労力を費やしてまでテレワークを導入する意味があるのかと疑問に思う方もいるでしょう。率直にいえば、テレワークは真剣に検討するべき価値があります。ここでは中小企業がテレワークを実施するメリットを3つ紹介します。

1. 「働き方改革」の推進力となり生産性の向上と人材の確保が期待

働き方改革は、“働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革”と厚生労働省により定義されています。テレワーク実施は、働き方改革の中で重要な位置を占めています。具体的な効果として以下のふたつが考えられます。

  • 生産性の向上
  • 人材の確保

テレワークを実現するためには「ITツールの活用」と「業務効率化(BPO・BPR)」を進める必要があります。これらはいずれも生産性の向上に寄与するものです。またテレワークは出産や育児・介護との両立をはじめ多様な働き方を男女問わず可能にします。これは雇用にとってプラスに働き、高齢化による人材不足に対処するべく「人材の確保」を実現します。

働き方改革の詳細はこちらの記事をご覧ください。

関連記事:働き方改革で考える中小企業の打ち手

2. さまざまなコストを削減して企業の競争力を高める

テレワークはコスト削減としての魅力もあります。具体的には、次の3つが考えられます。

  • オフィス費
  • 旅費交通費
  • 採用費

まずテレワークが常態化すればオフィスの規模を縮小することができます。そのため、オフィス維持にかかるさまざまな固定費(賃貸料や光熱費等)を削減することができます。次に、オフィスへの出社や遠方地への出張が減ると、従業員に支払う旅費交通費を節約できます。そして、前述したようにテレワークは人材の確保にとって有効なため、実質的に採用コストの削減につながります。

3. 補助金・助成金を活用して業務改革を実現できる

テレワークは政府が推奨しているため、申請できる補助金・助成金の数も多くあります。ここまで述べてきたテレワークのメリットを享受するために、活用を検討したいところです。以下は主な補助金・助成金になります。

関連記事:中小企業が補助金・助成金を申請する前に知っておくべきこと

テレワークに必要な環境の整備

テレワーク実施のメリットがわかり、実際にテレワーク導入を検討するとします。しかし、具体的にどのような手順でテレワークを実施すればいいのかわからない方も多いはず。そこで、テレワーク実施の流れを5つのステップにまとめました(下図)。

上の図の中で、みなさんが特に難しさを感じるのは3つ目の計画・準備におけるIT環境の整備ではないでしょうか。具体的には、

  • Web会議ツール
  • セキュリティ対策
  • 業務システム

などで戸惑う方も多いのではないかと思います。具体的にどのようなツールやソフトウェアを用いるべきかここでは論じませんが、一度導入すると変更しづらい上に業務の生産性への影響度も大きいため、必要ならば専門家の意見を聞いて、慎重にIT環境を整えましょう。

まとめ:テレワーク継続の課題「会社トップの意識改革31.3%」

テレワークに関する調査2020(連合調べ)によると、テレワークを継続する上で従業員が最も課題だと考えることは「会社トップの意識改革(31.3%)」です。本文で述べたように、テレワークは働き方改革やコスト削減などにおいて多くの利点があり、中小企業でも実施するべき重要な戦略だといえます。そのため、経営者のテレワークに関する意識の差が中小企業の競争力に差を生む可能性が高いです。ぜひとも、導入するだけではなく継続する長期的な視点を持って、テレワークに取り組んでみてはいかがでしょうか。

執筆:師田賢人

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この記事を書いた人

【Harmonic Society株式会社 CEO】
外資系コンサル、Webエンジニア、Webライター、フォトグラファーを経て、2023年にHarmonic Society株式会社を設立。企業の経営の悩みを言葉で解決している。一橋大学商学部卒。

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