中小企業のテレワーク導入「課題と対応」

もともと働き方改革やオリンピック対策として推進されていたテレワークですが、コロナ問題を機に一気に各企業に浸透しました。以前から準備していた企業はともかく、やむを得ずテレワークを導入し、苦戦している企業も多いようです。コロナ禍で一年が経過した現時点での、テレワークの状況について改めて見ていきます。

目次

1.テレワークの導入状況

引用:中小企業庁「2020年版中小企業白書

中小企業庁が、「2020年版中小企業白書」の中で、各省庁およびリサーチ会社のテレワークに関する調査をまとめています。資本金が50億円以上の企業の導入率は50%を超えていますが、スタートアップ企業を除き、資本金が小さい企業の導入率は10%台です。
テレワークを導入しない理由として最も多いのが「テレワークに適した仕事がないから」で7割を超えており、次いで「業務の進行が難しいから」、「情報漏えいが心配だから」、「導入するメリットがよく分からないから」となっています。

テレワーク導入の目的

新型コロナウィルスが蔓延してからは、患者・感染者との接触機会を減らす観点から、国や地方自治体が各企業にテレワークの推進を呼びかけていますが、本来のテレワーク導入の主な目的は、働き方改革の一貫として、生産性の向上や従業員のワークライフバランスの実現でした。各企業が導入目的として回答した理由が以下になります。

このグラフを見ると「定型的業務の効率性(生産性)の向上」と回答した企業が56.1%と最も多く、次いで「勤務者の移動時間の短縮」、「通勤困難者(身障者、高齢者、介護・育児中の社員等)への対応」が続き、定型業務や、それを会社に来て行うための往復の通勤負荷を減らす目的であったことがわかります。

2.テレワークのメリット・デメリット

一方で、テレワークを導入している企業に対するアンケートでは、資本金1,000万円未満を除き、「効果があった」と回答している企業が70%以上を占めており、導入することで一定の効果を実感している企業が多いことがわかります。

それではここで、テレワーク導入のメリット・デメリットを企業側の視点で整理してみます。

テレワーク導入のメリット

・労働生産性の向上(業務効率化)
・オフィスコストの削減
・非常時の事業継続への備え
・従業員満足度の向上(企業イメージアップ)

テレワーク導入による企業側のメリットは、主に業務効率化とコスト削減です。通勤のための移動の手間や負担を省くことで従業員のプライベートの時間を確保することができ、電話応対などの業務がなくなるため、集中力や業務効率アップにつながります。また、従業員が出社しなくなればオフィスを用意する必要がなくなるので、事業所の一部を廃止したり、レンタルオフィスなどに移転したりすることができ、従業員の交通費だけでなく、オフィス賃貸料や光熱費の削減も可能です。
また、今回のコロナショックや大きな災害などの非常事態でも、テレワークを導入していれば事業を継続できる可能性が高まります。データをクラウドで管理すれば、サーバーの破損など物理的なリスクを防ぐことができます。さらに、テレワークによって働きやすい環境を整え従業員の満足度を高められれば、優秀な人材をより採用しやすくなります。

テレワーク導入のデメリット

・勤怠管理が面倒
・人事評価が難しい
・セキュリティリスクが高くなる
・コミュニケーションが少なくなる

一方でデメリットとしては、基本的に従業員がオフィス以外で働くことになるので、従業員がどのくらいの時間働いたのかを把握するのが難しくなります。従業員の労働実態がわからず勤怠管理がおろそかになると、長時間労働につながる可能性があります。また従業員の評価を成果ではなくオフィスにいる時間などで判断している企業では、上司の目が届かないところで果たして真面目に仕事をしているのか、判断ができないといった声も聞かれます。
またパソコンやタブレットなどの端末を社外に持ち出して作業をするため、端末を紛失してしまったり、画面を他人に見られてしまったりといった情報漏洩のリスクが発生します。筆者が働く会社では「テレワークを導入したことでウィルス攻撃などのセキュリティ脅威が、導入前の12倍になった」と情報システム担当がこぼしていました。
さらに従業員が集まらなくなることでコミュニケーションの機会が減り、かえって業務効率が落ちたり孤独を感じる従業員も増えているようです。

3.テレワーク導入の課題

デメリットと重複する部分もありますが、テレワークを導入する上での課題を挙げてみます。
テレワークの実施を検討する際の課題

引用:東京商工会議所「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」

こちらは緊急事態宣言発令期間(2020年4月7日~5月25日)を経た、東京におけるテレワークの実施状況について東京商工会議所がアンケート調査を行った結果です。
前回調査(2020年3月13日~31日)と比較して、1位と2位が入れ替わっていますが、「社内体制が整っていない」、「テレワーク可能な業務がない」という回答は、引き続きどの企業も共通して持っている課題と言えます。
上記回答をふまえ、具体的な課題を挙げてみます。

・そもそもテレワークできる業務ではない

オフィスの管理部門や対面での接客対応などが必要ない業務の場合はテレワーク環境さえ整えば可能なのでしょうが、製造業や医療、保育などはテレワークが難しい職種です。

・ルールや設備・セキュリティなどの環境が整っていない

デメリットでもお伝えしましたが、テレワークを実施する環境(ネットワークや勤怠管理、人事評価など)が整っていないと、テレワークの導入は難しいでしょう。

・コミュニケーションが取りづらい・孤独感を覚える

対面でのコミュニケーション機会がなくなり、従業員によっては孤独を感じ業務効率が落ちるといった課題が出てきます。顔が見えるチャットツールの導入や、週に数日は出社させるルールを決めるなど、企業側の対応が必要です。

・お金がかかる

ネットワークや端末の準備、勤怠管理システムやチャットツールの導入など、テレワークを導入するにはコストがかかります。導入後に多少のコスト削減が見込めるとしても、初期費用は準備しておかなければなりません。

4.テレワークに関連した助成金・補助金

テレワーク導入の課題を金銭面でサポートしてくれる助成金や補助金を紹介します。当座の資金として利用を検討してみてはいかがでしょうか。

助成金・補助金名称概要詳細(提供元サイト)
IT導入補助金中小企業・小規模事業者が自社の課題や
ニーズに合ったITツールを導入する経費
の一部を補助する制度です。
https://www.it-hojo.jp/
小規模企業持続化補助金小規模事業者等が直面する制度変更
(働き方改革や被用者保険の適用拡大、
賃上げ、インボイス導入等)等に対応
するため、販路開拓等の取組の経費の
一部を補助する制度です。
https://r1.jizokukahojokin.info/
人材確保等支援助成
(テレワークコース)
良質なテレワークを新規導入・実施する
ことにより、労働者の人材確保や雇用管
理改善等の観点から効果をあげた中小企
業事業主が助成対象となります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/
seisakunitsuite/bunya/t
elework_zyosei_R3.html
働き方改革推進支援助成金
(団体推進コース)
事業協同組合・信用協同組合・企業組合
・商工組合などの中小企業事業主の団体
や連合体に対する助成です。条件を満たす
事業主団体が、団体に属する事業主の雇用
している労働者の労働条件を改善するた
めに、時間外労働の削減や賃金引上げに
向けた取組を実施した場合に、その事業主
団体等に対して助成するものです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/
seisakunitsuite/bunya/
0000200273.html

その他東京都限定のテレワークに関する助成金や補助事業は、以下からご確認ください。

助成金・補助事業名称詳細(提供元サイト)
テレワーク促進助成金https://www.shigotozaidan.or.jp/
koyo-kankyo/joseikin/03-telesoku.html
サテライトオフィス
設置等補助事業
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/
hatarakikata/telework/satellite/
宿泊施設テレワーク
利用促進事業
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/
tourism/kakusyu/telework/index.html
はじめてテレワーク
(テレワーク導入促進整備補助事業)
https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-
kankyo/boshu/telework.html

5.まとめ

新型コロナウィルスにより、本来テレワークを導入する予定がなかったのに半ば強制的に導入する羽目になった企業や、取引先の大手企業が導入していて、書類の電子化やweb会議などの対応を迫られる企業も少なくないようです。テレワーク導入をデメリットと捉えるのではなく、事業継承や人材確保など後々の会社経営も視野に入れ、助成金などもうまく活用して、この非常事態を乗り切りましょう。

執筆:小高 優

よかったらシェアお願いします!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

【中小企業診断士】
生命保険会社、人材会社、戦略コンサルタント会社での経験を経て、2021年に中小企業診断士として独立。強みであるマーケティングとテクノロジーを軸に、中小企業の売上拡大を目的として活動

目次