大企業のような潤沢な予算を組むことがむずかしい小規模事業者にとって、経営資金の確保は重要な経営課題の1つです。「創業や経営に役立つ補助金制度を知りたい」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、小規模事業者の経営に役立つ「小規模事業者持続化補助金の創業枠」について具体的に解説します。
小規模事業者が販路拡大や設備投資に活用できる補助金も紹介しますので、これから創業を考えている方や創業間もない経営者はぜひご覧ください。
小規模事業者持続化補助金の創業枠が経営に役立つ理由
小規模事業者持続化補助金は、地域の雇用や産業を担う小規模事業者を支援する制度です。販路拡大や生産性向上にかかった費用の一部を補助することで、制度変更への対応や賃金引上げを後押ししています。
その中で、小規模事業者持続化補助金の創業枠とは、これから創業を考えている方や創業間もない小規模事業者を重点的に政策支援する制度です。
小規模事業者持続化補助金には、通常枠も存在しますが、創業枠と比べると補助上限額に大きな違いがあります。通常枠の補助上限額は50万円に対して、創業枠の補助上限額は200万円となり、受け取れる補助額に最大150万円もの違いがあるのです。
したがって、創業枠の要件を満たす小規模事業者は、通常枠ではなく創業枠を活用することで、金額的なメリットを受けやすくなります。
引き続き、創業枠が経営に役立つ理由を解説します。
補助対象となる事業や経費が幅広い
創業枠では、機械装置費や広報費など計11項目が補助対象経費です。
補助対象経費の幅が広いため、創業期の重要な支出に活用でき効率的な事業成長につなげられます。補助対象経費の詳しい説明は後述します。
販路開拓の費用に最大250万円の補助を受けられる
先ほども少しふれましたが、小規模事業者持続化補助金の創業枠の最大補助額は250万円です(2024年4月時点)。
この金額は、補助上限の200万円とインボイス特例50万円を合算した金額となります。
販路拡大や生産性向上にかかる経費にあてられるため、資金面での不安を軽減して思い切った取り組みも可能になります。
条件を満たせば再申請できる
創業枠の補助を受けるためには、採択審査に合格する必要があります。採択審査で不採択となった場合、その回の補助を受けられません。
しかし、仮に不採択となっても、次回の公募に再申請することができます。次回の公募までに、より説得力のある事業計画書を作成すれば、審査をクリアして補助を受けることが十分に可能なのです。
出典:第14回・第15回小規模事業者持続化補助金(一般型)申請時によくあるご質問
小規模事業者持続化補助金の創業枠の申請要件と補助額
ここで小規模事業者持続化補助金の創業枠の申請要件と補助額についてみていきましょう。
創業枠の申請要件
小規模事業者持続化補助金の創業枠に申請できる事業者は以下のとおりです。
- 個人事業主
- 法人
- 特定非営利活動法人
業種ごとに従業員数に上限が設けられています。
事業 | 常時使用(業務に従事)する従業員の数 |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業をのぞく) | 5人以下 |
宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業・その他 | 20人以下 |
創業枠に申請する際は、「特定創業支援等事業」の受講証明書を提出しなくてはいけません。受講証明書がない場合、創業枠に申請できないためご注意ください。
”産業競争力強化法に基づく「認定市区町村」または「認定市区町村」と連携した「認定連
携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を公募締切時から
起算して過去3か年の間に受け、かつ過去3か年の間に開業した事業者であること。”
引用:小規模事業者持続化補助金<一般型>ガイドブック 第8版 全国商工会連合会
創業枠の補助率と補助額
創業枠の補助率と補助額がこちらです。
小規模事業者持続化補助金の創業枠の補助率および補助額 | |
補助率 | 2/3 |
①補助上限額 | 200万円 |
②インボイス特例 | 50万円 |
最大補助額(①+②) | 250万円 |
インボイス特例とは、免税事業者が適格請求書発行事業者へ転換する際に事業環境の変化に対応できるよう設けられた制度です。詳しくは、小規模事業者持続化補助金<一般型>ガイドブックをご参照ください。
ご覧のように、小規模事業者持続化補助金の創業枠の補助率は2/3となり上限額は200万円です。ただし、インボイス特例に該当する場合、最大250万円の補助を受けられるため、創業期の重要な支出に活用できる点も創業枠の大きなメリットといえます。
補助対象となる主な経費
小規模事業者持続化補助金の創業枠の補助対象となる経費がこちらです。
- 機械装置費
- 広報費
- ウェブサイト関連費
- 展示会等出展費
- 旅費
- 開発費
- 資料購入費
- 雑役務費
- 借料
- 設備処分費
- 委託・外注費
たとえば、飲食店を経営している企業が、新規顧客獲得のために店舗の改装工事をしたとしましょう。このとき、客席の増設やバリアフリー化などにかかった費用が「委託・外注費」として補助対象になる可能性があります。
また、ハンドメイドショップを経営している個人事業主が販路拡大のために展示会に出展した場合、ショップのPRに使ったチラシや看板の製作費が「広報費」として補助対象になる可能性があります。出展料も「展示会等出展費」として補助の対象になるでしょう。
小規模事業者持続化補助金の創業枠の注意点
小規模事業者持続化補助金の創業枠にはどのような注意点があるのでしょうか。ここでは、申請時の注意点を紹介します。
事業者の種類による必要書類
- 個人事業主は、事前に開業届の提出が必要
- 法人は、「履歴事項全部証明書」または「現在事項全部証明書」の原本が必要
- 特定非営利活動法人は、「法人税法上の収益事業を行っていること」「認定特定非営利活動法人ではないこと」が必須条件
電子申請を選択する際の注意点
- 電子申請システム「Jグランツ」を利用する
- 「Gビズプライムアカウント」の取得が必須
- アカウントの取得に3週間から4週間かかる場合があるため、早めの準備が必要
出典:第14回・第15回小規模事業者持続化補助金(一般型)電子申請(jGrants)
小規模事業者が販路拡大や設備投資に活用できる補助金
創業枠以外にも、小規模事業者が利用できる補助金制度は複数存在します。下記の表を参考に、自社の事業段階や経営目標に応じた適切な補助金制度がないか探してみましょう。
補助金制度 | 概要 |
地方公共団体の創業補助金 | 創業に必要な経費の一部に対して、国や地方公共団体が補助する制度 (東京都の創業助成事業など) |
IT導入補助金 | 労働生産性の向上や業務効率化を目的としたITツールの導入に対して、かかった費用の一部を補助する制度 |
ものづくり補助金 | 生産性向上を目的としたサービスや試作品の開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資等の一部を補助する制度 |
事業再構築補助金 | 事業・業種の拡大や事業再開等、思い切った事業再構築を行う中小企業や小規模事業者に補助金を交付する制度 |
事業継承・引継ぎ補助金 | 事業の再編や統合などの事業継承を行う企業を補助する制度 |
まとめ
小規模事業者持続化補助金の創業枠は、創業にかかる費用の一部を補助することで、持続的な経営を支援する公的な制度です。
正しく申請して補助を受けるためにも、申請要件や必要書類など、必要なルールを確認して漏れのないように準備を進めましょう。
なお、公式サイトを確認しても「申請要件を満たしているか心配…」「説得力のある事業計画書を作成したい」と不安やお悩みのある方は、ぜひこの機会にハッシュタグまでご相談ください。
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執筆者:千葉 拓未、監修者:Harmonic Society株式会社 代表取締役兼CEO 師田 賢人、中小企業診断士 居戸 和由貴