事業再構築補助金は、中小企業が新分野に挑戦したり事業の方向性を変えたりする際に支援を受けられる制度です。
事業再構築補助金を活用すると、経費負担を軽減しながら、既存事業を運営したり新たな事業に乗り出したりできるようになります。
この記事では、介護事業における事業再構築補助金の活用方法を解説します。
具体的な項目は以下の通りです。
- 介護保険サービスと介護保険外サービスの違い
- 事業再構築補助金を活用できるケース
- 事業再構築補助金を活用する意義
- 実際の採択事例
- 事業再構築補助金以外に介護事業で活用できる補助金・助成金
なお、この記事では、民間企業が実施する介護保険外サービスに注目し、地方自治体などが実施する公的なサービスは除いて解説します。
介護保険サービスは事業再構築補助金の対象外
事業再構築補助金は、どのような介護事業に活用できるのでしょうか。
結論からいうと、介護保険サービスに事業再構築補助金は活用できません。
介護保険サービスとは、デイサービスなどの居宅サービスや特別養護老人ホームなどの施設サービスを含めた、介護保険制度によって運用されている介護サービス全般を指します。下表に含まれている介護サービスは、全て介護保険サービスです。
画像引用:厚生労働省|介護保険制度の概要 介護サービスの種類
第12回事業再構築補助金の公募要領には、国が目的を指定して支出する他の制度と同一または類似の事業の場合、事業再構築補助金の対象外となる旨が記載されています。
“⑭国庫及び公的制度からの二重受給
国庫及び公的制度からの二重受給 ・テーマや事業内容から判断し、間接直接を問わず(過去又は現在の)国(独立行政法人等を 含む)が目的を指定して支出する他の制度(例:補助金、委託費、公的医療保険・介護保険 からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等)と同一又は類似内容の事業 ※補助対象経費が重複していない場合でも、テーマや事業内容が国が支出する他の制度と同一 又は類似内容の事業である場合は対象外となります。 ”
したがって、介護保険から介護報酬を受け取る介護保険サービスは事業再構築補助金の対象外です。
しかし、介護事業に事業再構築補助金を全く活用できないわけではありません。事業再構築補助金は、民間企業が行う介護保険外サービスに活用できます。
介護保険外サービスで事業再構築補助金を活用する意義
介護保険外サービスで事業再構築補助金を活用する意義を解説します。まずは介護保険外サービスの概要についてみていきましょう。
介護保険外サービスの概要
介護保険外サービスとは、介護保険から介護報酬を受け取らない介護サービスのことです。主な収入源は利用者から受け取る利用料となります。
介護保険外サービスの例がこちらです。
- 配食サービス
- 家事代行
- 洗濯や料理などの家事代行
- ペットのお世話
- 同居家族に対する家事支援(洗濯や掃除など)
- 自宅の庭の草むしりや手入れ
- 家具の修理
- 入院中の支援
- 冠婚葬祭の付き添い
- 認知症の方の見守りや同行
参照:厚生労働省 農林水産省 経済産業省|地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集 保険外サービス活用ガイドブック
介護保険外サービスは、要介護認定を受けていない「自立」の高齢者に対しても介護サービスを提供できます。介護保険の枠組みにとらわれない柔軟な介護サービスを提供できるのが特徴です。
地域で暮らす高齢者やその家族はさまざまなニーズを持っています。介護保険外サービスは、そうした方々の課題解決に役立つ重要な介護サービスのひとつです。
事業再構築補助金を活用する意義
介護保険外サービスで事業再構築補助金を活用する意義は、公的な支援を受けながら介護事業を展開できることです。
事業再構築補助金に申請して採択を受けると、運営経費の一部に補助を受けられるようになります。経費の一部に補助を受けることで「運営資金が枯渇する」というリスクに対して一定の備えができます。
例えば、事業再構築補助金の事業類型の1つである「成長分野進出枠」では、最大4,000万円の補助が用意されています。補助率は、中小企業で最大2/3、中堅企業で最大1/2です。
介護保険外サービスは、提供した介護サービスに対して、介護保険からの報酬を見込めません。また、顧客を確保する営業活動も自社で行う必要があります。
そこで、事業再構築補助金を活用することで、資金面のリスクを抑えながら無理のない事業展開につなげられるのです。
事業再構築補助金で採択された介護保険外サービスの事例
では、実際にどのような介護保険外サービスが事業再構築補助金で採択されているのでしょうか。ここでは、第11回事業再構築補助金で採択された介護保険外サービスを紹介します。
スキルを生かし介護保険適用外サービス「暮らしのサポート」展開
アイネット株式会社は、要介護に該当しない高齢者を対象として、家事代行や外出同行、見守りサービスを行う事業計画を立案し採択されました。
高齢者が、外出せず自宅にいる期間が長いと、身体機能や認知機能が低下するおそれがあります。同社の取り組みは、そうした高齢者の巣ごもりに対応するための介護保険外サービスです。
参照:事業再構築補助金 第11回公募 採択案件一覧【事業計画書の概要】
地域の健康を守ることで、日本経済の発展に寄与する事業計画
えびす堂株式会社は、24時間看護師介護士常駐型の住宅型有料老人ホームや見守りシェアハウスを運営しています。
事業再構築補助金に採択された事業計画は、そうした既存の介護・看護事業の強みを発揮すべく地域住民が安心して暮らせる環境整備の事業を提案したものです。
“既存の介護・看護事業の強みを活かして①地域食堂②病児保育所③上級者用介護セミナーを展開する。本事業は、地域住民が安心して暮らせる環境を整備する事業である。 ”
引用:事業再構築補助金 第11回公募 採択案件一覧【事業計画書の概要】
脱炭素・生産性向上を果たす新しい高齢者施設給食システムの構築
株式会社あうらは、高齢者施設における給食システムの構築を立案し採択されました。
事業計画の具体的な内容がこちらです。
“最新の凍結技術及び再生エネで運用する工場を整備し、簡単調理の冷凍介護食を製造。顧客(介護施設)の温室効果ガス排出削減・生産向上に貢献する事業”
引用:事業再構築補助金 第11回公募 採択案件一覧【事業計画書の概要】
事業再構築補助金以外に介護事業で活用できる補助金・助成金
ここまで読んで、「事業再構築補助金以外の補助金・助成金はないの?」と疑問を持つ方もいるでしょう。
事業再構築補助金以外にも介護事業に活用できる補助金・助成金は存在します(下表)。
制度名 | 概要 | 具体例 |
小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者が実施する販路開拓などの取り組みに対して、経費の一部を補助 | 集客のためのホームページ開設やチラシの作成 |
IT導入補助金・ICT導入支援事業補助金※ | 介護施設へのITツールやICTの導入を補助 | 介護ソフトやコミュニケーションツール、タブレット端末などの導入 |
業務改善助成金 | 生産性向上に資する設備投資などにかかった費用の一部を助成 | 大人数送迎可能な福祉車両、スロープ付き福祉車両の導入 |
※地方自治体別に実施
各補助金・助成金制度の概要を確認したい方は、こちらの記事もご覧ください。
介護施設の経営に補助金・助成金を活用するメリットとは?具体的な制度も紹介
まとめ
事業再構築補助金は、介護保険外サービスに活用できる補助金です。
事業再構築補助金を利用することで、事業の経費負担を軽減でき、無理のない運営につながります。
民間企業が提供する介護保険外サービスは、地域の高齢者やその家族のニーズを満たすために役立つ取り組みです。
ぜひ事業再構築補助金を活用して、地域住民から喜ばれるような介護事業の運営につなげてください 。
ただし、事業再構築補助金には申請要件が存在するほか、補助を受けるためには採択される必要があります。
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執筆者:千葉 拓未
監修者:Harmonic Society株式会社 代表取締役兼CEO 師田 賢人、中小企業診断士 居戸 和由貴