ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発等による生産性向上に役立つ設備投資等を支援するための補助金で、近年ではドローン(無人航空機)が革新性ある機器として、多数の補助事業が採択され実施されています。
さて、日本は台風が多いことから風水害、昨今では線状降水帯の出現により、かつてはなかったような継続的な豪雨、また頻発する地震など、まさに災害大国と言っても過言ではありません。これまで、災害が発生した際には、消防を中心として、警察、場合によっては自衛隊、地元の消防団や有志によって捜索救助活動が行われてきました。利用される航空機は有人航空機や有人ヘリコプターでしたが、輸送力と引き換えに大型で、なかなか細かな地形まで入り込んでいくことは難しいことでした。
そこで、昨今、他分野で活躍しているドローンを活用するのは必然的、合理的なことと言えましょう。ただ、ものづくり補助金によって調達するドローンが災害対応に直接活躍する場面は稀なことでしょう。というのは、災害の際に出動するドローンは消防や自治体の保有するものがほとんどだからです。しかし、多くのドローンスクールは消防や近隣自治体と提携を結んでおり、いざというときには、指導側の熟練者パイロットと機体を提供する場合もあります。また、今後の法整備、体制転換によっては、非常時にはドローン保有者に協力義務が発生する可能性が予想できなくもありません。
本記事では、ドローンを活用した災害対応について、非常時におけるドローンの有用性をご紹介します。災害対応に活躍するドローンは、ドローンの潜在能力をフルに発揮しながら災害対応活動に従事します。したがって、とりわけドローンによるインフラ点検や測量に通じる高度な技術を垣間見ることもできるでしょう。こうして、ドローンというこの新たな技術の可能性の大きさを十分に知っていただければ幸いです。
要救助者捜索・救助活動
要救助者捜索
どんな災害であれ、発生後に最も優先すべきことは、難を間一髪逃れた被災者・要救助者を一刻も早く捜索・発見することです。捜索できないことには、救助したり、物資を提供したりする準備も意味がありません。
災害が発生した後にドローンを活用することで、次のような特徴のため、逃げ遅れた被災者を発見することが従来より容易に可能になり、また救助活動に役立ちます。
- ドローンはヘリコプターや有人航空機よりも飛行高度が低く、また搭載しているカメラによる撮影映像の解像度も高いので、被災者を発見しやすい。
- 稼働音が小さいため、救助を求める被災者の声をかき消しにくい。
- 映像のみを撮影する光学カメラの他にも、人の体温を検知して被災者を探すための赤外線カメラや、被災者が持っているかもしれない携帯電話やWi-Fiの電波を検出して位置を絞り込むための小型携帯電話基地局を搭載して出動させることができ、被災者の速やかな発見と救護活動に役立つ。
- 現場に歩いて向かって捜索を始める前に空から状況把握できることにより、どんな災害が起きており、その範囲がどれぐらいか、現場に要救助者がいるのかを把握した上で、その後の捜索・救助プランの策定を迅速かつ正確に行うことができる。
救助活動
ドローンは、上空から被災地域の被害状況をリアルタイムで撮影し、その映像を地上の隊員に送信し、迅速な状況把握に役立ちます。そして同じく上空または低空から、搭載した光学カメラと熱感知機能を活用して遭難した被災者を発見します。さらに夜間飛行機能も活用し、時間を問わず救助活動を支援します。
また、軽量の救援物資を積載し、被災地へ投下する活動も行えます。これは特に、被災地が孤立分断している場合に有効です。そして、拡声器を搭載し、操縦者の指示や応援を被災者に直接伝えることもできます。
被災状況調査
被災地の状況の把握
災害による無惨な出来事が終わった後も、被災状況を調査することには大きな意義があります。どのような家屋がどんな被害を受けたのか、インフラ施設はどのような被害を受けたのか、住民の避難の仕方は適切だったか、振り返ることは多くあり、類似の災害があったときのための教訓とすることができるのです。
災害対応に出動した側にとっても、多くの情報を集め、調査と評価を行うことは非常に重要です。ここでもドローンを活用することができるでしょう。
まず、上空からの空撮によって、被害の全体像の情報を迅速に収集することができます。場合によっては、測量で用いる機器を搭載し3Dモデリングにより全体像をより正確かつ精巧に捉えることができるかもしれません。また、ドローン活用により、従来よりも広い範囲の調査を実施でき、しかも時間や労力を節約することができます。さらには、崩落や倒壊しそうな、隊員の安全が危ぶまれそうな危険な場所もドローンから安全に調査することができるのです。
今後の防災・減災へ向けた取組
多くの災害においては災害後、道路、河川、住宅、各種の施設が従前の形をとどめず、曲がり、歪み、はては災害により消え去っていることさえあります。すると各個人が現在どこに立っているのかも分からない状態となり、混乱に発展する可能性すらあります。
したがって、ドローンを活用して精度の高い位置情報を取得し、国土地理院が提供するGIS(地理情報システム)と連携して被災地の地図・地理情報の復元・更新を行い、復興へ向けた礎となる第一歩とします。
その後、定期的な空撮を継続的に実施し、被災地の復興状況を長期にわたって追跡調査し、ハザードマップの作成や復興計画へと反映させていくのです。
ドローンによる災害対応のメリット・デメリット
メリット
出動場所や時間帯の制限が柔軟
従来、ヘリコプターや有人航空機を活用する場合には、離着陸するため、それなりに広い土地からでないと出動できませんでした。一方、ドローンの場合、離着陸スペースは比較的狭くて済みます。
少数の人員で広域活動が可能
従来はヘリコプターや有人航空機を活用して対応していたわけですが、どんなに人員を減らそうとしても、各機材を操縦・運転する人が最低1人は現地へ向わなくてはなりません。この点、ドローンは無人航空機で、遠隔操縦により任務を遂行しますので、災害対応に当たるチーム全体の人員的余裕が確保でき、活動の幅が広がります。
コストが相対的に低い
記事冒頭で、災害対応のためのドローン保有の形態にはいくつかあると述べました。災害時対応の主体となるのは地元自治体・消防です。平時から自前で万全に備えておければそれは結構ですが、たいへんな費用が掛かります。
そこで、災害対応にドローンを活用するに際しては、自治体が委託料を支払い、近隣にあるドローンオペレーション企業・団体とあらかじめ協定を締結しておき、いざという有事の際に協力を得るスキームが一般的です。あるいは、自治体や消防が独自にドローンを保有しようと考える場合でも、従来のヘリコプターや有人航空機を調達するよりもずっと安価で、いずれにせよ、ドローンの登場により、災害対策に要するコストが下がったと言えるでしょう。
分断・救助困難地域での活動が可能
ドローンは小型でパイロットが乗っていませんから、例えば余震が続いている地震被災地など、二次災害が危ぶまれるような救助困難地域にも出動できます。
土砂災害などにより交通が分断され、救助車両も駆けつけられない、ヘリコプターが着陸できるような場所でもない、というような場合にも、ドローンを活用した救助者支援活動が可能です。また、救援者が辿り着けたとしても、無理な救助活動を行うことにより、かえって二次災害に巻き込まれてしまうリスクを避けることもできます。
それどころか、木が生い茂る森の中やトンネルの中、さらには小型ドローンであれば、インフラ点検で活用できるのと同じように、被災地の家屋の中、配管やタンクの中、下水道の中を調査し安全性の確認に当たることができます。
デメリット
天候の影響を受けやすい
ドローンは機体が小さて軽く、このことは活動時の機動力を上げ、活躍に結びつきます。しかし、ドローンは悪天候・環境の影響を受けやすいのです。寒冷地でバッテリーが劣化してしまい、稼働できる時間が著しく短くなってしまったという例もあるそうです。
そのため、災害対応という場面では過酷な天候が容易に想定できるわけで、ドローン機体開発各社が力を入れているとのことです。
長時間にわたり飛行できない
充電した電気で飛行するドローンは、当然、バッテリー容量以上に飛行することはできません。一般的には、ドローンの連続飛行可能時間は30分程度と言われています。災害対応に当たるドローンとしては、より長時間飛行できる新しいドローンの開発が期待されます。
もっとも、昨今の研究開発では、バッテリーの改良はもちろん、ガソリン燃焼エンジンを積んだものや、バッテリー動力とエンジンを組み合わせた「ハイブリッドドローン」なるものも積極的に試行錯誤されており、11時間以上飛行したという事件結果もあります。今後の進歩が期待されるところです。
積載できる物資の量が少ない
一般的なドローンの可能積載料は1kg程度で、災害対応で大型の物資を搬送することはできません。そのため、重い資材を運ぶことはドローンの今後のドローンの大きな課題と言わざるを得ません。
近い将来、レベル4、カテゴリーⅢが一般化していく道筋には、運送業・流通業において活用されるドローンの積載力については活発な研究が進められていきます。最新機種では約10kgの資材の運搬が可能なものも発売されているそうです。なんとイギリスでは最大積載量2tという突拍子もない機種も開発中とのこと。つまり、災害対応時にドローンが搬送できる能力も、今後急速に改善していくと予想されます。
電波状況に大きく左右される
ドローンは無線操縦のため、電波が届く範囲内でしか活動できないことは言うまでもありません。一般的にドローンに利用される2.4GHz帯の電波が到達する範囲は、およそ300〜2,000mで、その外へ出てしまうと無線操縦ができなくなります。
しかし、無線操縦ができなくなっても、ドローンに搭載されたGPS情報やカメラによる情報から自分の位置を特定し、自律的に目的まで飛行する「自律制御」技術が役に立ちます。
あるいは、目的地まで向かうことはできなくとも、無線操縦が不可能となった時点で、自動的に帰還するよう設定することもでき、不測事態を避けることができます。
熟練操縦者育成の必要性
災害対応時にドローンを思い通りに扱うには、高度な技術が必要です。例えば、要救助者に安全にできるだけ近くまで近付いたり、狙った位置に正確に物資や救命具を投下するという活動には熟練した操縦技術が不可欠です。自動運転という機能もありますが、刻一刻と状況が変わる災害現場では、手動操縦により対応した方がよく、そのために優れた操縦技術が必要不可欠なのです。
そこで、全国各地に作られたドローンスクールで、熟練した操縦者の育成が行われています。ドローンの基本操作方法、メンテナンス方法、実戦的事態を想定した学習など、ドローンスクールでは多岐にわたる内容を学ぶことができます。このような所で学んだ操縦士が増えていけば、災害対応におけるドローンの活躍も、多方面におけるドローン活躍の可能性は拡大していくことでしょう。
まとめ
災害対応に特化した事業のためにドローンを取得するというのはおよそ考えにくいことです。ただ、最新鋭機器ドローンを保有して事業を展開するということは、極論すれば消防車を所有しているかのようなものではないでしょうか。消防や自治体と協定を締結していればもちろんのこと、道義的な意味では災害対応に協力するのが望ましいでしょうし、活躍のチャンスとも言えるでしょう。
測量、インフラ点検、操縦士スクール運営、農業、空撮、エンターテイメント。さらには搬送・物流、運搬…と、ドローンを活用した事業を展開する前途が大きく広がっていると言えるのではないでしょうか。
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執筆者:池谷 陽平、監修:中小企業診断士 居戸 和由貴