ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発等による生産性向上に役立つ設備投資等を支援するための補助金です。近年では、革新的機器、またそのサービスの代表的なものとしてドローン(無人航空機)は外せません。今や、さまざまな分野で積極的にドローンが活用されています。
本記事では、ドローンの「空撮」分野での活躍を広い可能性と制作物とともにご紹介します。ヘリコプターでもセスナ機でもできない各分野で大いに評価されるドローン空撮映像を制作する事業にご関心のある事業者様に、積極的な、前向きな検討の材料となれば幸いです。
「空撮」とは-ドローン登場前後の空撮事情の変化
空撮とは、映画撮影や報道等で、航空機等を使用して空中から撮影する方法です。空撮は、地上での撮影では表現することのできない壮大な映像を撮影することができます。なお、空撮した写真は「空中写真」と呼ばれています。空撮は、報道や映画撮影以外でも、重大な気候変動の1つであるヒートアイランド現象の調査活動には、赤外線カメラなどが使われています。
ドローン登場前後の空撮事情
ドローンがまだ登場していなかった当時の空撮では、ヘリコプターやセスナ機の機内でカメラを肩に担ぎ、身を乗り出して被写体を捉えて撮影する方法が主流でしたが、しかし、機体から発生する振動の影響が撮影映像に出やすいという課題がありました。
そこで、振動を簡易的に吸収するために、「ウォブルスティック」「直線回転導入機」「トランスファーロッド」といったさまざまな器具を用い、カメラ重心で上下・左右・前後の3軸を調整してカメラを制御し、振動に対応して空撮していた時期がありました。
そんな時期を経て、1990年6月、パナソニックが電子式としては世界初の手ぶれ補正「ファジィ・ジャイロ」採用のS-VHS-CビデオカメラNV-S1を発売しました。この新しい装置は、船や航空機やロケットが、端末に搭載されたセンサーから取得される情報だけを用いて自分を位置を測定する「ジャイロスコープ」という計測器を応用し、船舶や航空機の横揺れを装置の「ジャイロ安定機」「ジャイロスタビライザーカメラ」が登場し、よりスムーズに動く美しい映像の空撮が実現したと言えるでしょう。
ドローンによる空撮映像が効果的なケース
ここでは、どのようケースでドローン空撮すると、良い映像を効果的に制作できるのか、一般的なシチュエーションをご紹介していきます。
ドローンというと、ついつい空高く飛行して撮影したらよいのではないかと考えがちですが、空撮だからといって必ずしも高い場所から撮影したら魅力的に見えるわけではありません。むしろ私たちの身の回りには、1m〜50m程度の高さで十分に魅力的で効果的な映像を撮影できるケースが多く存在しているのです。
被写体の規模感、または空間的・地理的状況を表現する場合
大きい公園や学校など、建物等の全景や、どれだけの規模のものなのかを表現したい、自然風景や海岸線などで地理感を見せたいといった場合、俯瞰で撮影することによって、対象の大きさや、周りに何があるのかといった地理感を養うのに効果的です。
空中にある被写体に接近して撮影したい場合
高く太くなった長い樹齢の木の上の様子、塔の尖端など、地上から簡単には接近できない対象物に近づいて撮影したいときに、ドローンでの空撮はとても有効で特別な経験にもなるでしょう。
歩けない(走れない)場所を移動している撮影をしたい場合
自分では表面を移動できない水の上や、実際には移動が困難な林の中をスムーズに進むような映像を撮影したい場合もドローンでの撮影が有効です。こういったケースでは、特に広さや雄大さを表現したいときに効果的です。
対象物を追い掛けながら撮影したい場合
自動車やバイクなど、移動する対象物を追い掛けつつ撮影したいときにも、ドローン撮影を効果的に活かすことができます。特に、映像作品の一部であれば、追跡対象がどこを移動しているかといったことを伝えるカットで有効です。映画などでよく見かける迫力満点のカーチェイスシーンでも、後方上空からだけでなく、前方や横からの追跡撮影も可能です。
FPVドローンでのライド感/迫力と臨場感に満ちた映像作品
FPV(First Person View:一人称)ドローンが発揮するハイスピードで疾走する、自分が飛行しているかのようなFPVや、カメラを傾けてあえて水平にせずに撮影するようなライド感ある映像は、映像を閲覧する人にも、実際に乗っているような感覚や臨場感といった迫力あるイメージをつらえたい場合に有効です。
ドローン空撮のメリット
迫力と美しさに満ちた映像体験
ドローン空撮によって、これまでの人生で経験したことのないような新たな角度から改めて世界を見てみることができます。さあ、ドローンで空撮した素晴らしい眺望や建築構造物の映像を多くの友人・知人にぜひ紹介してみましょう。
撮影手法は他にも無数にあり、例えばドローンを上昇させ、高層ビルの屋上に立って撮影する、飛行機から撮影するなど、挙げたら切りがありません。
自分が望む品質の映像制作に向けては、カメラ等のさまざまな周辺機器やアプリケーションが必要になっていくかもしれません。
それでも、最も重要なことは、基礎的なレベルから操縦の訓練を何度も何度も繰り返すことにあるでしょう。そしていつしか、別個の挙動を組み合わせた飛行ができるようになって訓練の成果が実るでしょう。こうして、自分が目標としていたハイクオリティな映像制作を達成できるようになれる可能性があるのです。なお、ドローンスクールに通って懸命に受講するのも有効です。
安価な空撮コスト
ヘリコプターやセスナ機を空撮に利用するコストと、同等の空撮をドローンを活用して行う場合のコストを比較するに当たって、おおむね時間単価で算出できたヘリやセスナと大きく料金体系が異なっています。そして、新規参入の機会により、多くの新しい事業者が低価格でのサービスを実施しているなどん事情も踏まえ、細かで正確なコスト比較は困難なため、明確にコストに言及している事業者様から、あくまで参考情報ということで比較情報を引用しました。
ヘリコプター | 30万円〜 |
セスナ機 | 撮影費:5〜10万円 + チャーター費:5〜10万円/1時間 |
ドローン | 5万円前後 |
(出典:DRONE NAVIGATOR)
費用
セスナ機・ヘリコプターは多くの場合、撮影者自身で操縦するのではなく、チャーターすることになります。セスナ機で1時間10万円前後、ヘリコプターではセスナの約2倍の20万円前後となります。
それに対して、ドローンは約20万円前後で購入することができるので一度購入をしてしまえば何度でも使用することができます。
ただし、ドローンの操縦ができない方や使用頻度の少ない方もいると思います。
そういった際にはドローン撮影を実施している会社へ外注することもできます。
費用はあくまで参考程度ですが、静止画だと5万円程度、動画だと10万円程度と比較的安価に利用することができます。もちろん、使用するカメラの種類や撮影条件によって費用は変動します。逆に、ドローンでの空撮を仕事にする場合においてもある程度の受注が見込められれば、仕事になるということがわかります。
(出典:Future Dimension)
空撮可能な場所や角度が増える
ドローンは、セスナ機やヘリコプターなどと比較して断然に小型なので、低空や狭小な場所、人が立ち入って撮影するのが難しい場所でも利用することができます。例えば、建物と建物の間にある細い隙間を通り抜けたり、火山の噴火口付近の人では入っていけない灼熱の中、今にも崩壊してしまいそうな廃墟内などの危険な場所、あるいは海の上で撮影することもできます。
また、ドローンの機体の多くは非常に小回りが利くよう設計・開発されているので、被写体をさまざまな角度から捉えることが可能です。動く被写体に接近して撮影したり、被写体の周囲を回って全体像を写したり、上空から見下ろすアングルや、低空から見上げるアングルなども自由に撮影することが可能です。木々の細い隙間をすり抜けたり、多彩で豊富な角度の映像を撮影できるのです。
ドローン空撮が効果的に活用される分野
映画・ドラマ・CMなどの商業空撮
ドローン空撮のジャンルの中でも、映画、ドキュメンタリー、ドラマ、ミュージックビデオ、CM撮影等の分野では、高度な空撮テクニックが求められることもあることから、以前からある空撮会社に案件が集中する傾向があります。
こうした分野のクライアントには、映画・ドラマ・ドキュメンタリー制作会社や広告代理店もコミットしており、入念な事前打ち合わせが何度も行われ、作者からは絵コンテやムードボードが多数示されるケースがほとんどです。短いシーンであっても何度も撮影が行われます。ドキュメンタリー作品の場合には、「一発撮り」その他の過酷な環境・状況での撮影を求められることもありますが、それらを乗り越え、完成に辿り着くのです。そして、空撮業者が映像素材の形式でクライアントに納品してプロジェクトが完了します。
・パフォーマンス動画
「OK Go – I Won’t Let You Down – Official Video」
・企業ブランドムービー + ミュージックビデオ
「ALFA ROMEO & WONK ブランドムービー “Passione”」
・ハンドクリームCM
「【キールズ 】クリーム UFC」
・JFEスチール株式会社
「JFEスチール株式会社の会社紹介映像です。」
観光空撮
これは商業空撮におけるドローン活用の良さとかなりの面で重複しますが、①以前のヘリコプターやクレーン利用の空撮よりも、小型ドローンの普及により空撮は費用面でも身近なものとなり、②人間には目視できないような場所を通過したり到達したりと、カメラを担いでいた時には思いもよらなかった多様で自由自在なアングルでの撮影が実現し、③ドローンの機種にもよりますが、とても高画質で迫力のある映像を撮影できます。例えば、DJI社のMavic Air 2では4Kでの撮影が可能なほか、顔認証機能や、撮影シーン認識機能など、一眼レフ顔負けの撮影が可能です。
これらのドローンの能力を発揮した空撮映像を観光地の魅力発信に用いるのが観光空撮です。
高いところから街全体を撮影したり、低空飛行させて、まるで実際に街を歩いているような撮影も可能です。海上を飛んで橋の下をくぐってみたり、トンネルを抜けたりとバイタリティに溢れた映像を制作することもできます。名所と呼ばれる街のスポットに出掛け、例えばそれが建築構造物であったなら、腕を振るって被写体の規模感を表現することでしょう。
・広島県観光空撮
「LOVE HIROSHIMA プロモーションビデオ Full Ver 英語編」
不動産空撮
不動産空撮は、不動産の売買や賃貸の売主・貸主の側が、物件の魅力を空撮映像によって広くアピールし、成約に向けた広報効果を目的として制作する空撮です。
お引越しを検討されている方の多くは、賃貸物件や分譲物件が掲載されているサイトを活用して物件を探しますが、そこで最も参考になるのは写真です。しかし、物件を探している側からすると、内装の写真に比べて外装の写真が非常に少ないと感じるかもしれません。不動産の外観は、人に例えるならば、いわば容姿のようなもので、外観を見て素敵だなと思えば、内観も気になり、見たくなってくるものです。
そこで、不動産空撮では、物件の外観そのものはもちろん、周辺環境がどうなっているのか地理感を把握可能にし、さらに地元の良いスポットをPRするのです。
物件の紹介
不動産空撮では、全体像を把握しにくい土地や、ビルの屋上からの眺望を観ることができます。地上から見るだけではイメージが湧きにくいような場合でも、ドローンを活用して俯瞰することによって物件全体の存在感が伝わります。さまざまなアングルや、周囲の自然や環境も含めた臨場感と迫力のある映像は、物件をより魅力的に紹介することに役立ちます。
ロケーション(物件位置)の紹介
ドローンによる空撮で、物件周辺のロケーション・地理感を把握することができるでしょう。物件周辺の美しい風景、四季折々の自然の眺めの映像を、人(操縦者)の目線で撮影することによって、現実の躍動感を感じられる映像となり、物件をいっそう魅惑的に紹介できるようになります。
ドローンを活用して物件周辺の環境を撮影しておくことで、近隣の施設や、アクセス可能な場所などを視覚的に捉えることができます。例えば、公園やショッピングセンター、交通機関などの存在や距離感を把握しやすくなります。
ドローンは高所からの空撮が可能なので、物件の外観や建物全体を効果的に表現することができ、物件の規模やデザイン、周辺環境を一望できるような映像を制作することによって、物件への興味を引き付ける助けとなるのです。
【埋め込み予定動画】
・東京不動産ルームツアー
「Central Tokyo SKY #01~東京都心のドローン空撮~」
・東京不動産ルームツアー
「Central Tokyo SKY #02~東京都心のドローン空撮~」
報道空撮
ドローンが社会一般で活用されるようになってからというもの、ニュース番組での空撮映像へのニーズが高まってきました。とりわけ、災害現場や事故現場の映像となると、緊急性が高く、当初は空撮会社に依頼して対応しているケースも多くありましたが、現在では各放送局がドローンの操縦ができる人材を配置するようになってきています。
こうして撮影された映像は放送局、ニュース制作会社の映像素材として使用されます。災害や事故現場の空撮が多く、その場における臨機応変な判断が重要になります。
新聞報道業界においても同様の課題を抱えています。事件・事故や災害現場からの報道は緊急性が高いにも関わらず、すぐに現場に向かうのはやはり困難です。そのため、一般の方が撮影したものを使うケースも多いのです。この場合に撮影されるのは、災害や事故の現場における「スチール写真」(動きのない静止画写真。元来、映画のような映像収録現場において撮影する写真。)となります。このような流れの中、新聞社の写真部が小型のドローンで対応するケースが増えており、空撮会社に依頼する機会は少なくなってきました。
空撮業界のこれから
ドローン業界全体の市場規模は、向こう5年間で約2.44倍に拡大すると予測されており、その中でも、ドローンを活用したサービスの市場規模は約2.8倍伸長すると見られています。
(出典:インプレス総合研究所)
つまり、ドローンを活用したさまざまなサービスが開発・実用化され、一般化していく潮流が見込まれているということです。
(出典:インプレス総合研究所)
そのドローン活用サービスの市場規模推移の内訳を見ると、点検、農業、物流の伸びが目立つものの、空撮分野も約8倍の拡大が見込まれる、れっきとした成長分野であると言えます。さらには、空撮には非常に高い操縦技術が必要であることなども勘案すると、点検分野、農業分野、物流分野への横展開も十分に可能性のある事業戦略と言えるでしょう。
したがって、ドローン空撮の分野は、これから参入する価値が十分ある市場と考えられます。
参入する個々の空撮会社にとっては、自社が強みとできる空撮ジャンルや技術を形成し、その映像・画像品質を保ちながら、ユーザーが依頼しやすいようサービスをパッケージ化するなどして、ユーザーの課題解決の提案内容で優位性を確立し、事業の土台を固めていけるよう努めていくのが重要となっていくでしょう。
まとめ
中小企業や小規模事業者が、ドローンのような革新的技術を持つ新たな商品や新サービスの開発事業を行う場合、ものづくり補助金の活用を検討できます。
新たな事業としてドローンを活用した空撮分野を候補としてお考えの経営者の皆さまにおかれては、いかに事業化するか、どのような手続きが必要か、人材をどう確保するか、熟慮に熟慮を重ねておられることでしょう。それでも答えはなかなか出てこない。
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執筆者:池谷 陽平、監修:中小企業診断士 居戸 和由貴