ChatGPTでなくなる仕事とは？AI時代を生き抜く中小企業のキャリア戦略

2023年7月20日2024年1月5日

生成系AIの進歩は、中小企業のキャリア戦略にも大きな変化をもたらそうとしています。

たとえば中小企業で働く従業員は、仕事がAIに置き換わることで新たなスキルを求められるでしょう。そして経営者は、AI活用による人的資源の管理に頭を悩ませているかもしれません。

そこで本記事は「キャリア戦略」を、中小企業の従業員または経営者（＝会社全体）の視点として定義し、ChatGPTなどのAI技術が中小企業の仕事にどのような影響を及ぼすのか、そして経営者にはどんな解決策があるのかをお伝えしていきます。

まずは、日本におけるAI普及の現状からみていきましょう。

日本のAI市場の成長

まずは、AI技術が中小企業の生産性とイノベーションを向上させ、どのような成果を生み出しているのか紹介していきます。

中小企業の成長とイノベーションをサポートするAI

AI技術の普及により、中小企業の従業員は日々のルーチンワークから解放され、より創造的な業務に専念できるようになります。

総務省の令和4年版情報通信白書によると、日本のAI市場は急速に成長しており、2025年度には1,200億円に達すると予測されています。

これは、新しいビジネスモデルの開発や業務効率化にAIが活用されていることを示しています。

中小企業のAI活用

総務省の「日本企業のAI・IoTの導入状況」（2019年）によると、国内においてAI・IoTを活用している企業は14~15%にとどまり、AIを活用している比率は中小企業に多いと報告されています。

今後、中小企業がよりAIを活用していくには、AI導入時のコストと、どういったビジネスモデルへ活用できるのかという具体的なイメージが必要です。

その一例であるChatGPTは、中小企業が効率的にカスタマーサポートを行うための手段としても活用され始めています。この視点は中小企業の経営者にとって、会社全体のキャリア戦略を考えるときにも重要なポイントとなるでしょう。

関連：ChatGPTは中小企業の成長をあらゆる角度から支援するツール

AIと仕事の変革

AIは、反復的なタスクやデータ処理に長けています。

たとえば一般事務、カスタマーサポートなどは、簡易的な作業部分を人間からAIへシフトすることで、業務効率が向上します。

これにともない、中小企業の従業員は新しいスキルの習得を求められる可能性があります。従業員が変化に対応できない場合、最悪のケースとして職を失うリスクもあります。

このように、中小企業とAIは決して無関係ではありません。ではそのような時代の中で、どんなキャリア戦略が必要なのでしょうか。次の章では、具体的な職種もあげてお伝えしていきます。

AIによって生まれ変わる職種とキャリア戦略

ChatGPTなどのAIが普及する中、一部の仕事が消失する可能性がある一方で、新しい機会も生まれています。ここからは、中小企業がAI時代を生き抜くためのキャリア戦略に焦点を当てます。

AIが人間の仕事を奪う？具体的な職種とは

ゴールドマン・サックスのレポートによれば、生成型AIの台頭により、アメリカ・ユーロ圏の両地域における産業全体で、最大4分の1の雇用が、AIに奪われる可能性があるとしています。（図１、図２）

これは業種によって偏ることも報告されており、たとえば事務は46％、行政・法務が44％、建設は6％、メンテナンス（屋外作業）は4％になると示されています。

図１：AIの自動化で影響を受ける産業雇用のシェア「アメリカ」（report抜粋）

図２：AIの自動化で影響を受ける産業雇用のシェア「ユーロ圏」（report抜粋）

また記事によると、AI研究の第一人者ベン・ゲーツェル氏は、人間の仕事の80％はAIが代替できると話しています。

このように、AIが普及することによって企業の業務内容に対する人員配置は大きく再編され、その結果として労働市場にも影響があると推察できます。

以下のような職種にはAIが得意とするタスク（繰り返しの作業、データ処理、文章作成、コミュニケーションなど）が多く含まれているため、AIの影響を大きく受けると予想されています。

一般事務
カスタマーサポート
Webデザイナー
作家、ライター
法務職

もちろん上記の職種に価値がなくなるわけではありません。しかし、優秀な人間がAIを活用するようになれば、相対的にAIが使えない人間の仕事が減ることは予想されます。

では、AIに置き換わらない仕事とはどんな特徴を持つのでしょうか。

AIに置き換わらない仕事の特性

これまで述べたように、AIの進化により、私たちの仕事が大きく変わってしまう可能性があります。しかし、すべての仕事がAIによって置き換えられるわけではありません。

記事によれば、AIは特定のタスクを自動化できるものの、人間の感情的サポートや創造性を必要とする職種には適していません。

例えば、顧客に深い感情的なサポートを提供する業務や、独創的なアイデアが必要であるクリエイティブな仕事において、AIが代替することは難しいでしょう。

重要な点は、AIを上手く使える人が雇用市場で優位に立つという点です。つまり、AIが仕事を奪うというよりも、AIを使いこなせる人が、そうでない人から仕事を奪っていると考えるべきです。

これは、AIが得意とするタスクを効率的に自動化しながら、人間ならではの感情や創造性を活かして価値を生み出すことができるためです。

したがって、AIのスキルを習得することで、雇用市場で競争力を保ち、人間の独自性を活かした価値ある仕事を続けられるでしょう。

AIスキルを習得する重要性

中小企業でAIを効果的に活用するためには、従業員の教育とトレーニングが不可欠です。

しかしAI技術の急速な進化により、実践的な人材育成を実施するためには、ビジネスの最前線で活躍している人材を講師に招く必要性が生じています。しかし講師に依存してしまうため、AIの普及を迅速に推し進めることが困難です。

そこで経済産業省は、「実践的なAI人材育成」において、「AI Quest」という課題解決型AI人材育成プログラムを紹介しています。

このプログラムは、企業の問題解決に役立つトピックを選び、要件の定義からモデル作成、実装方法、そしてプレゼンまでを一連の学習コンテンツとして提供しています。

同教材を活用することで、一貫した学習プロセスを経たあと、実際に問題解決に取り組むスキルを磨くことが期待されています。従業員の育成に悩む中小企業の経営者にとって、このようなツールを活用することも有効な手法です。

さて、ここまではAI普及による中小企業を取りまく変化と、仕事が置き換わっていく具体的な職種をお伝えしてきました。次の章では、中小企業のどんな課題にAIを活用し、どのようなポイントに留意して導入していくべきかをご紹介いたします。

中小企業がAIを活用するためには

先述した通り、中小企業の従業員・経営者の双方からみて、AIの普及は現状に大きな変化をともなうものであることを解説してきました。ここからは中小企業の経営者からみた視点で、AI拡充の課題を踏まえ、解決策を説明していきます。

中小企業の課題

経済産業省が発行した「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」や中小企業のIT利活用の現状と課題に関する報告書によると、AI導入における中小企業の課題について、以下のような点が挙げられます。

課題	具体的な内容
リソースと人材の制約	・大企業と比較して人材や予算、データなどのリソースが限られていること・AIの専門知識や技術を持つ人材を確保することが難しい
目的の明確化と計画立案	・目的やニーズを明確にし、必要なリソースを評価することが難しい・データの収集や整備が難しい・リスク管理やガバナンスの確立が不十分
パートナーシップと教育	・パートナーシップの構築や外部の支援を受ける機会が少ない・従業員のスキルアップや教育が不十分