生成系AIの性能が急速に上がる中、自社でChatGPTを活用したい中小企業の経営者は増えているのではないでしょうか。
そんな折、ChatGPTの新機能「Advanced data analysis」が公開され、ツールの利便性を高める新プラグインとして注目を集めています。(公開日:2023年7月7日)
本記事は、新機能を実践し、中小企業の業務に活用できるポイントをお伝えしていきます。
※Code interpreterは、2023年8月28日にAdvanced Data Analysisに名称変更されました。
Advanced data analysis(旧:Code interpreter)とは?
Advanced data analysisは、ChatGPT Plus(有償版)で利用できる拡張機能ですChatGPTにさまざまなファイルをアップロードし、データを加工してダウンロードできます。
プログラミング(Python)の知識がないユーザーでも、日本語の対話だけでデータを視覚的に表現できることが特徴です。
たとえば、
・PowerPointの資料作成
・Excelファイルからグラフ作成
・PDFの翻訳や要約
・画像ファイルの編集
・QRコードの生成
・GIFアニメーションの制作
などが行えます。
Advanced data analysis(旧:Code interpreter)の導入方法
Advanced data analysis使用の有無は、ホーム画面から自分で設定することができます。
まず、以下の画像をご覧ください。
自分の名前の右横にある「・・・」をクリックします。
次に、「Settings & Bate」をクリックします。
「Beta features」を選択し、「Advanced data analysis」をONにします。
この状態から一度、ホーム画面に戻ります。
「GPT-4」を選択し、「Advanced data analysis」をクリックすると、青いチェックマークが入ります。これで設定は完了です。
ChatGPTへの入力部分に「+」マークが表示され、ファイルのアップロードができるようになります。
Advanced data analysis(旧:Code interpreter)の活用例
本章では、Advanced data analysisの機能を、PowerPointとExcelで実践していきます。またGIFアニメーションも制作します。
PowerPointの作成
ChatGPTにPowerPointの作成を依頼し、ダウンロードすることができます。
まずは、以下のプロンプトを入力します。
#命令:
あなたはPowerPointの作成を得意としています。
来週、中小企業の経営者に向けた、ChatGPT活用法のプレゼンテーションがあります。
以下のテーマと出力方法に従い、PowerPointの作成を行って下さい。
#テーマ:
・中小企業でChatGPTを活用する方法について案を出して下さい。
#出力方法:
・スライドは、合計7枚以上にしてください。
・1枚目に、表紙を作成して下さい。
・2枚目に、目次を作成して下さい。
・3枚目に、ChatGPTの概要を200文字程度で説明して下さい。
・各スライドは、「見出し」と「本文」に分けて下さい。
・各スライドの「本文」は、200文字程度で書いて下さい。
・最後のスライドに、まとめを作成して下さい。
上記の工程が終了したら、PowerPointのダウンロードリンクを教えてください。
すると、ChatGPTから以下の回答が示されました。
ChatGPTがスライドの構成を組み立てた上で、スライドを完成させたようです。
実際にダウンロードしたスライドを、以下にGIF画像で表示します。
※GIF画像制作にもAdvanced data analysisを使用しています。
このように、Advanced data analysisの機能で、PowerPointのスライド作成がすばやく行えます。これをたたき台とし修正を加えることで、PowerPointによる資料作成の時間が短くなります。
また、ChatGPTから出力されるスライドの質は、対話を繰り返すことでも高めることができます。
Excelファイルのグラフ化
中小企業で頻繁に使用される外部ファイル(Excel、Word、PowerPoint、画像、PDFなど)をChatGPTにアップロードし、さまざまな加工を加えて出力することができます。
一例として、Excelファイルのデータからグラフを作成し、出力してみましょう。
まず、以下画像のようなExcelファイルを用意します。
このExcelファイルは、企業における年間の売上(Sales)、経費(Expenses)、利益(Profit)を、月ごとに表した架空のデータ※です。
※単位:百万円
次に、ExcelファイルをChatGPTにアップロードし、以下のプロンプトを入力します。
#命令:
あなたはExcelファイルの分析を得意としています。
以下の条件と出力形式に従い、Excelファイルの分析を行って下さい。
#条件:
・Amount「0」の横線は黒にしてください
・売上は青、経費は赤、利益は灰色で示してください。
・凡例に単位は必要ありません。
・Amountのみ単位(million yen)をつけてください。
#出力形式:
以下の内容を、1枚の画像データで出力して下さい。
・各月の売上、経費の推移を示す折れ線グラフ
・各月の利益の推移を示す棒グラフ
上記の工程が終了したら、画像のダウンロードリンクを教えてください。
すると、ChatGPTから以下の出力が回答されました。
このように、プロンプトで指定したグラフが瞬時に出力されました。さらに、一番下にあるURLリンクから、グラフの画像をダウンロードできます。
この後、元のExcelデータと照らし合わせ、数値などのファクトを確認すれば作業完了です。
自社で行うグラフ作成の手間を、大きく減らすことができます。
なお、出力内容に「Show work」というコマンドがあります。これをクリックして開くと、以下のようなPythonコードの画面が現れます。
これについては次章で説明いたします。
Pythonのコードの作成・実行
Advanced Data Analysisでは、日本語でPythonを操作することができます。前節のExcel操作も、Pythonの実行過程を「Show work」というコマンドから見ることができました。
そして、Pythonのコードを直接ChatGPTへ入力し、実行させることも可能です。
以下は、1から10までの整数を合計するPythonのコードです。
sum(range(1, 11))
これを、そのままChatGPTに入力すると、以下の回答が出力されます。
このように、正答が導かれました。
この発展として、ChatGPTにコードのミスを確認させ、間違えた箇所をあぶりだした上で、正しいコードを回答させることも可能です。
以下のプロンプトをChatGPTに投げてみます。
#命令:
あなたはプログラマーです。
これからコードのデバッグ作業を行います。
以下の目的とコードを比べ、誤りを見つけ直してください。
#目的:
1から10までの整数を合計する
#コード:
sum(range(1, 10)
すると、以下のように出力されました。
このように、Pythonを用いた簡易的なコードを実行し、デバッグ作業をChatGPT上で行うことができます。
ただし、コードが長く複雑だと、必ずしも正しいプログラムを実行・指摘できるとは言い切れません。あくまでも補助ツールとして位置づけるのが望ましいといえます。
中小企業での活用例として、簡易的なデバッグ作業や、社員のプログラミング学習に役立てることができます。
GIFアニメーションの制作
最後に、画像を連続再生させるGIFアニメーションを制作します。一度で出力することは難しいので、対話を繰り返しながら回答させます。
まずは、以下のGIFをご覧ください。
このGIFアニメーションは、A社からG社までの7社の売上データを時系列で視覚化したものです。データは、ChatGPTがランダムな数値を、2020年1月から、2023年9月までの各月ごとに割り当てています。
アニメーションは、各月の売上データを棒グラフで表示しており、各社の売上が変化する様子を、視覚的に把握することができます。
<h2>Advanced data analysis(旧:Code interpreter)使用時の注意点</h2>
Advanced data analysisをONにして対話を行う場合、一定時間何も操作しないと、セッションが自動的に終了します。
この場合、以前のデータを読み込むことができないので、最初から対話をやり直す手間が発生します。
実際、以前のセッションを開くと、画面の上部に以下のようなメッセージが現れます。
<日本語訳>
Advanced data analysis(ベータ)のチャットはタイムアウトしました。会話を続けることはできますが、以前のファイル、リンク、コードブロックなどは、期待通りに動作しない場合があります。
この点に注意しながら、活用していきましょう。
まとめ
ChatGPTの新機能「Advanced Data Analysis」は、作業効率を格段に向上させる新プラグインです。
中小企業で活用できる場面としては、外部ファイルを加工、Pythonコードの作成・実行を通したデバッグ作業、社員のプログラミング学習などがあります。
ハッシュタグでは、ChatGPT導入のサポートも行っております。
無料でのご相談・お見積もりを承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
執筆者:生成系AIライター 那須 太陽、監修者:Harmonic Society株式会社 代表取締役兼CEO 師田 賢人、中小企業診断士:居戸 和由貴
師田賢人
【Harmonic Society株式会社 CEO】
外資系コンサル、Webエンジニア、Webライター、フォトグラファーを経て、2023年にHarmonic Society株式会社を設立。
企業の経営の悩みを言葉で解決している。一橋大学商学部卒。
居戸 和由貴
【中小企業診断士】
生命保険会社、人材会社、戦略コンサルタント会社での経験を経て、2021年に中小企業診断士として独立。強みであるマーケティングとテクノロジーを軸に、中小企業の売上拡大を目的として活動