生成系AIの1つであるChatGPTが流行しており、中小企業でも活用が模索されています。
ChatGPTは人間の質問に対し、さまざまな回答を示す高性能なAIです。ビジネスシーンで中小企業の業務をサポートし、業務効率化に大きく貢献する可能性を秘めています。
とくにメール文章を作成する「ライティング」の分野をはじめ、「広告作成」「事業内容の要約」「質問・相談チャットボット」など、多くのコンテンツ作成でAIの普及が進んでいます。
そこで今回は、これからChatGPTを自社に取り入れたい中小企業の経営者に向けて、ライティングの活用例をベースに、さまざまなコンテンツの作成事例をお伝えしていきます。
まずは、文章生成の基本的な使い方からみていきましょう。
ChatGPTの基本的な使い方
ChatGPTは、プロンプト(質問文)を入力することで、それに応じた回答が出力されます。たとえば「北海道の有名な観光地を10個知りたい」といった場合、図1のような回答を得ることができます。
図1: ChatGPTの使用例
この回答が得られる過程でAIが質問文の文脈を理解し、インターネット上の膨大な情報を調査します。そのため、人間がゼロから考えるよりも早く目的の文章を得ることができます。
しかしAIの回答には誤りも含まれています。
図1では、5番目の旭川市に関する項目において「旭川市:美瑛の丘」が名所だとしていますが、正しくは「美瑛町:美瑛の丘」です。
また6番目の「北見市」でひまわり畑が挙げられていますが、北海道でひまわり畑が有名な地域は「北竜町」という街です。
このようにAIからの回答は不完全であるため、確実なファクトチェックを行うことが必要です。
関連:中小企業向けのChatGPT活用術「ファクトチェックのコツと要点」
また、誤った回答を出力するリスクへの対策も重要です。
たとえば質問文(=プロンプト)をより細かく設定したり、欲しい情報だけ箇条書きで指定することで、回答の精度を高めることができます。さらに「Link-Reader」のようなプラグインを導入することでも、同様の効果を得ることが期待されます。
Link-Readerは、ChatGPTに入力した”リンク先”から情報を抽出することができます。
たとえば、
・Webページ
・PDF
・Word
・PowerPoint
・YouTube
・画像ファイル
などのリンク先から、その内容を要約・解説できるツールです。
使い方は、ChatGPTへの入力時に「リンク先の内容をプラグインで調べてください」などと質問することで、リンク先の内容を自動的に読み取って回答してくれます。ただし100%正答ではないので、やはり人間によるファクトチェックは欠かせません。
上記の基本的な使い方を踏まえ、もう少し実用的な中身をご説明いたします。
ChatGPTの使用例
先にお伝えした通り、ChatGPTは人間から質問を投げかけることで、欲しい情報を得ることができます。
これはライティングの分野とも非常に相性が良く、質問文章を工夫することで、回答の精度を上昇させることが可能です。
関連:中小企業経営者が知るべきプロンプト・エンジニアリングの技術と事例
そこでこの章では、中小企業で最もAIを取り入れやすい「メール文章の作成」に着目して、実用例をご紹介します。
<想定場面>
業界:全業界
シーン:社内メールで報告・相談を行う
問題・課題:営業先との交渉に困っていたサラリーマンが、上司に社内メールで「現状報告」と「アドバイス」を求めたいものの、メール文章が上手く書けない。
Chatgptへの入力文(一部):
#入力文
・自社製品の販売について、営業先の〇〇会社は購入したいという意思を示している。
・その際、〇〇会社から、金額を割引できないのかという相談も受けた。
・現在は金額交渉を行っている。
・私自身は、現状の金額のままで自社製品を購入して頂きたいと考えている。
・〇〇会社との金額交渉が決裂した場合の代替案も考えている。
(代替案は上司から納得の得られるようなものを作成して下さい)
・現状を打破するアドバイスが欲しい、という旨の内容を添える。
上記の想定場面をChatGPTに入力したのが、下図2です。
図2: ChatGPTによるメールの作成例(入力文)
この入力文に対し出力された回答が、下図3になります。
図3: ChatGPTによるメールの作成例(入力文)
上図3の回答をそのまま使うと不自然ですが、たたき台として活用する分には非常に有用です。
出力内容の正確性を確認し、相手に合わせて表現を修正すれば、メール文を短時間で作成できます。
とくに注目したい回答が、
・初回購入分について一部割引を行う
・継続購入は現行の価格維持する
というアイデアの部分です。
形式的なメール文章の言葉は数回繰り返せば身に付きますが、目の前の問題に対してどう解決していくのかという思考はなかなか時短化できません。
現行のAIは人間の思考に置き換わらないものの、サポート機能として効果的だといえます。
自社のリソース確保が難しい中小企業の経営者にとって、社員にメール文の書き方などのライティング術を教育することは悩みの1つかもしれません。
一方、社員側も日々の仕事に忙殺され、自己啓発やスキルアップの時間を調整することが難しいと考えられます。
経営者がChatGPTの利便性を実感し、上記のような時短テクニックを自社の業務に取り入れていくことが大切です。
ChatGPTを搭載したサービス例
ChatGPTはさまざまなコンテンツの作成に応用できます。
中小企業の経営者も、調べものや社内メールの効率化のみならず、もっと実践的なAI活用を模索されているのではないでしょうか。
そこでここからは、ChatGPTを搭載したサービスを展開する企業の例を3つご紹介いたします。
広告コンテンツ作成支援ツール開発【株式会社ライトアップ】
中小企業が事業を存続させるための課題は、新規顧客の継続的な獲得です。その実現には自社サービスの認知度向上が必要であり、広告作成が効果的な手法として活用されています。
しかし広告は、変動する顧客のニーズを正確に捉える必要があるため、作成する過程だけでなく完成品にも調整・更新を行います。これを人力で行うことは大変な作業です。
そこで株式会社ライトアップは、ChatGPT搭載の広告自動作成ツール「Omneky」を提供しました。(参照元)
Omnekyは、「text-to-text」という、テキスト自動生成機能を有しています。これを用いると、広告のタイトルや見出しに使いたい単語を入力することで、AIが文章を生成してくれます。
図4:text-to-text機能
また、文章を入力することにより、AIが画像を生成してくれる機能もあります。広告を企画し、イメージを明確化して、それを実際に形にするのは非常に手間のかかることです。
しかし、このツールを用いると、文章作成・画像生成を短時間でできるようになります。これにより、広告コンテンツ作成業務の生産性が大きく向上します。
企業の事業内容要約支援ツール開発【株式会社クレジット・プライシング・コーポレーション】
中小企業が事業投資・強化のために、自社とつながりのある提携先を探したり、自社の販売先候補や仕入れ先候補の開拓することは重要な業務です。
しかし、非上場企業の情報を十分に集めることは、簡単ではありません。
そんな中、株式会社クレジット・プライシング・コーポレーションは、国内に100万以上ある非上場中小企業の情報を検索できるプラットフォーム「QFINDR」を提供しました。(参照元)
下図5は、同ツールが企業の評価レポートを作成している操作画面です。
図5:QFINDRによる企業レポート作成例
具体的には、企業のWebサイト情報に基づき、以下の内容を要約できます。
・事業の概要
・事業課題
・想定しうるリスク
・営業戦略
・その他のキーワード
同ツールではこれらの情報を、ChatGPTの活用により短時間で要約することができます。
この効果で中小企業は、候補となる企業の比較・検討といった、本質的な作業に時間を割くことが可能になります。
エンジニアの自己研鑽用コンテンツ開発【ランサーズ株式会社】
中小企業の経営者は、自社の社員に対するスキルアップや育成にも注力しなければなりません。
しかし経営者は事業の充実・拡大に忙しく、社員も目の前の業務に追われ、啓発活動の時間を充てるのが難しい状況といえます。
そこでランサーズ株式会社は、ChatGPTの技術を用いたエンジニア向けスキルアップアプリ「教えて、MENTAくん!」をリリースしました。(参照元)
LINEアプリという形でリリースし、隙間時間を有効活用することで、他人とチャットする感覚で情報収集や自己研鑽ができます。
図6:「教えて、MENTAくん」の使い時
このアプリを用いると、プログラミングに関する質問やアイデアの壁打ちができます。さらに、クイズや役立つTipsといったコンテンツもあり、日々楽しく自己研鑽をすることができます。
同ツールは中小企業社員のスキルアップをサポートし、リソース不足の1つの対策となりえるでしょう。
まとめ
今回は、中小企業の経営者に向けて、ChatGPTを使用したメール業務の実用例と、コンテンツ作成に関するChatGPTを搭載した活用事例をお伝えいたしました。
ChatGPTは登場以来、さまざまな使用方法が編み出されています。使用者のアイデア次第では無限の可能性があるAIといえるでしょう。
ビジネスにおいても広告コンテンツ作成などに使用され、企業の生産性向上に貢献しています。
ハッシュタグでは、中小企業の経営者に向けたChatGPT活用のサポートを行っています。
これまでの御社の強みを、AIやデジタルを用いて更に発展させたい中小企業の方々に向けて情報発信しております。御社でお困りのことがございましたら、初回のご相談は無料で承っておりますので、お気軽にご相談ください。
執筆者:那須 太陽、監修者:Harmonic Society株式会社 代表取締役兼CEO 師田 賢人、中小企業診断士:居戸 和由貴
師田賢人
【Harmonic Society株式会社 CEO】
外資系コンサル、Webエンジニア、Webライター、フォトグラファーを経て、2023年にHarmonic Society株式会社を設立。
企業の経営の悩みを言葉で解決している。一橋大学商学部卒。
居戸 和由貴
【中小企業診断士】
生命保険会社、人材会社、戦略コンサルタント会社での経験を経て、2021年に中小企業診断士として独立。強みであるマーケティングとテクノロジーを軸に、中小企業の売上拡大を目的として活動